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勤務中の脳出血は労災認定出来るか

 

1、事実経緯

 B氏は製パン会社(以下、A社という)で二交代の梱包作業に従事していた。2013年1月10日夜8時頃、勤務中のB氏はお腹がすき、同僚に仕事を頼んで、1階の着替え室でインスタントラーメンを食べ、20分が経ち、着替え室を出た後、ずっと泣いてばかりだった。同僚はその原因を聞いたが、B氏は既に話しができず、絶えず自分の喉と胸を指差し、呼吸の困難さを示した。同僚はB氏の家族に連絡し、救急車でB氏を病院に運んだ。B氏は1、脳出血、2、脳ヘルニア、3、高血圧、4、低カリウム血症の病状と診断された。

 B氏は、1ヶ月余り治療を受け、退院した。B氏はA社で3年以上元気に働き、高血圧、心脳血管など持病がなく、毎年の健康診断が正常、家族の中にもそのような患者が無かった。今回勤務中に病気が突発したのは、連続長時間の残業で過労したことによるためであり、生涯に渡る障害が引き起こされたので労災認定されるべきと考え、A社に労災認定してもらえるよう求めたが、応じられなかった。

2、決 定

 B氏の家族はA社の所在地の人事社会保障局に労災認定を申し入れ、社保局は、受理後、調べた上、「労災保険条例」の第14条、15条に照らし、B氏が事故、予期していない傷害などに遭遇し、労災として認定すべき状況にあらず、更に労災とみなすべきの状況に属しない。故に、労災を認めず、法律適用が正しいと決定を下した。B氏はその決定に不服で、裁判所に行政訴訟を提起し、上記の決定の取消を求めた。

 

3、判 決

 裁判所の審理中、B氏は裁判所に「長期間にわたる過重な残業と脳出血発病との因果関係があるかどうか」について司法鑑定を申し入れた。裁判所指定の司法鑑定所が「被鑑定人B氏は長期間にわたる過重な残業は脳出血発生の誘発要因の一つになる可能性がある」との鑑定意見を出した。裁判所は最終的にその司法鑑定の結論を引用し、B氏が発病前3日間連続の残業でその脳出血の誘発に影響した恐れがあると考えた。勤務中脳出血の突発状況に関しては通常では労災の認定または労災のみなしをしてはならないとされている。しかし、本件については個別の特殊な状況に対して労災の待遇に照らし、処理することができると判断し、上記の人事社会保障局の決定が法律適用の不当に属し、取消し、且つ本判決の発効した日から60日以内に、新たに具体的な行政行為を行うものとすると判決した。

4、関連通達

 勤務中の労災認定またはみなしの当否に関して「労災保険条例」は規定がないために、労働部弁公庁は相次いで2回通達を公表し、1回目の1994年6月3日付「勤務中発病労災として処理しない回答」(労弁発(1994)177号)では、高血圧は、普通の病気であり、発病原因及び発病時間の特定が難しく、現行政策上も労災として処理する規定がなく、たとえ職場で、勤務時間内に発病したとしても、労災とせず、病気あるいは業務外負傷によって処理しなくてはならないと決めた。その後、2回目の1996年7月11日付「勤務時間中発病労災処理の参照可否に関する回答」(労弁発(1996)133号)では、ある病気は仕事の原因によるものであり、あるいは仕事と緊密な関連があり、勤務中突発的な場合には、特殊な状況として労災として認定できることを明確にした。

以  上

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。