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「撤三」制度における商標の非典型使用について

 

1、「撤三」制度

 新商標法第49条第2項の規定に基づき、登録商標が正当な理由なく3年連続で使用されていない場合、如何なる企業または個人でも国家商標総局に対し当該登録商標の取消を申し立てることができる。国家商標総局は受理後、申し立てられた商標登録者に「登録商標使用証拠の提供に関する通知」を送達する。同規定は通常「撤三」制度と呼ばれている。

2、「撤三」答弁

     商標登録者は上記の「通知」を受取った後、2ヶ月以内に国家商標総局に過去3年以内に該当商標の商品保護上に使用された証拠資料を提供しなければならない。具体的には、ビジネス分野における公開使用、商標権利者の真実の意図を表せる使用及び商標の登録範囲に合致する合法的使用等が含まれている。もし、使用しなかった正当な理由が存在するなら、それを挙証しなくてはならない。同時に国家商標総局「登録商標使用証拠の提供に関する通知」を返送し、その裁定をしてもらう。
     しかしながら、形式的に商標使用の概念に合致しない状況が少なくない。これらの状況が商標使用の範囲に当てはまるのかどうかについて、次のとおり三つの点に注意を払う必要がある。

1)名門大学学校名への商標使用

 実務上、多くの名門大学が不法登録防止のために学校名に係る標識、文字を全ての商品類別に商標登録したが、商標取消の可能性が高くなっております。ある名門大学は不法登録防止のためにその校章、学校名等を45種類の商品·サービスに登録した後、ある外資系企業から第28類「釣具」商品に関する「撤三」を要求された。これらの商標登録は予防性のある商標登録として、その主要目的が自己使用ではなく、公衆に誤認を生じさせず、かつ市場競争秩序を守ることを目指している。

 商標法第49条の規定に基づき、正当な理由があれば、「撤三」申請を却下することができる。一般的には、不可抗力や政府による規制強化、破産·清算などの状況が正当な理由に当たる。従って、非営利主体としての名門大学が公益の目的で商標登録するのは「正当な理由」に当たると考えられている。

 

2)景品への商標使用

 ビジネス分野において商品販促のために景品等の方式でプロモーションを行う企業が少なくない。これらの景品の多くは事業者が商標登録した商品ではないため、通常、企業は登録した商標の使用範囲を景品に拡大、又は景品等の商品に商標登録を行う。しかし、これらの二つの方法、特に二つ目の方法に「撤三」の恐れが高いのである。

 商品取引は、売買契約のみならず、営利を目的とする様々な取引形態も含まれている。対価を支払わない景品が商標法上の商品ではないとは言えない。景品は、企業のPRとプロモーションのためにその他の商品とともに販売されているものであり、かつ景品に登録された商標は原産地等商品の基本情報を表し、その品質も一般商品と同じように商標法、製品品質法等の法律法規の監督を受けており、その商標も品質保証の役割を果たしている。

 従って、景品は依然として市場取引の対象であり、それに使用された商標も商標としての役割を果たし、登録商標の使用に属すると認定することができる。

 

3)平面登録商標を立体の方式で利用する

 実務上、多くの企業は平面商標を登録したが、実際にはこれを立体商標として販売活動やビジネスプロモーションを行った。この場合において「撤三」の要件に合うかどうかについて、以下のとおり検討する必要がある。

 商標使用に合致するためには、実際に使用した商標が登録商標でなければならない。しかし、実際の使用過程でビジネスプロモーションや、包装設計、店舗装飾等様々な原因で登録商標に一定の調整を行う企業が少なくない。この調整が登録商標と同一性を持った場合は、登録商標の使用だと認定することができる。しかし、この調整によって識別機能を失い、公衆に誤認を生じさせる恐れがあった場合、登録商標の使用と認定することはできない。

 「最高人民法院の商標授権権利確認行政案件審理における若干問題に関する意見」第20条に基づき、実際に使用した商標と登録した商標には些細な差異があったものの、その特徴に著しい変更がなかった場合、登録商標が使用されたとみなすことができる。

 また、「北京市高級人民法院の商標民事紛争案件審理における若干問題に関する解答」第6条には、実際に使用した商標が登録した商標の特徴に著しい変更ががなかった場合、登録商標が使用されたとみなすと定めている。

 従って、調整された商標と登録商標との間に同一性があるかどうかについて、消費者の判断が極めて重要である。平面商標を立体の方式で使用することについて、平面商標を立体商標に拡大するだけであり、かつ消費者に誤認を生じさせない場合、登録商標の使用だと認定することができる。

以上

 

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。