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「中華人民共和国個人所得税法」の改正に関する 全人代常務委員会の決定について

 全人代常務委員会は、2018年8月31日付「「中華人民共和国個人所得税法」の改正に関する決定」(以下、決定という)を公布、2019年1月1日より施行を決めた。以下では「決定」の内容について簡単にご紹介します。

1、目 的

 個人所得税法の改正は2011年以来となり、「決定」は全体として大幅な減税を含むより抜本的なものとなっており、中国の社会、経済の情勢変化及び実情に応じ、個人所得税によって貧富の差を縮小、社会財産分配を調節する役割を果たす。

2、改定の主な内容

(1).居住・非居住の概念の導入

 「決定」では暦年単位で中国に満1年の居住者は納税者とする現行の所得税法を見直し、その判定は暦年単位で中国に183日の滞在日数を元に行うことに変わり、居住・非居住の概念を導入し、それによって納税義務などを区別することとする。

(2).総合課税の導入

 これまでの11種類の所得から9種類まで減らし、そのうち給与・賃金、労務報酬、原稿料、特許使用料の4項目の労働所得については合算した上で同一の累進税率を適用する総合課税となるが、それ以外の所得については引き続き分離課税となる。

(3).個人所得税率の変更

 総合所得の税率は3%~45%の7段階のまま変わらないが、3%〜25%が適用される中・低所得層にとっては減税額が大きい。一方30%以上の税率が適用される所得部分については、変更はないため、高税率が適用される外国人にとっては実効税率にはそれほど大きな影響はないが、個人経営所得の税率は5%〜35%の5段階のまま変わらないが、各税率が適用される所得額は変更となり、35%の最高税率が適用される所得は現行の年10万元から50万元に大幅に引き上げられる。

 利息、株式利息、配当所得、財産リース所得、財産譲渡所得及び偶然所得に比例税率の20%が適用される。

(4).納税所得額の計算

 居住者個人の総合所得について現行の給与所得の基礎控除額が月3,500元から月5,000元(年6万元)まで引き上げられる。外国人の場合は中国人と同じ月5,000元に統一される。

(5).付加控除項目の新設

 (4).の基礎控除の他、これまでの養老保険、医療保険、失業保険、住宅積立金等の特別控除項目は維持しながら、更に子女教育費、継続教育費、高額医療費、住宅ローン利息や住宅賃料、老人扶養などの支出が付加控除項目として新設される。

 

(6).租税回避阻止条項の追加

①個人とその関連側との業務が独立個人間の取引の原則に合致せず、正当な理由がないにもかかわらず、本人またはその関連側の納税すべき額を減らすこと

②居住者個人が支配するか、または居住者個人が居住者企業と共同で税負担の明らかに軽い国(地域)に設置、支配する企業は経営上の理由がなく、居住者個人に帰属すべきの利益を配分しないか、または配分を減少すること。

③個人はその他の合理的な商業目的を有しない行為を実施し、不当な税収利益を獲得する。

上記の租税回避などについて税務機関による更正処分の権限や罰則が規定される。

 

(7).納税人及び納税申告

 個人所得税は所得者を納税人とし、所得を支払う企業または個人を控除義務者とする。納税者は中国公民身分証明書番号を有する場合には、その身分証明書番号を納税人番号とするが、さもなければ、税務機関はその納税人識別番号を付与する。

 中国国外から所得を取得し、または非居住個人が中国国内で二箇所以上から給与・賃金所得を取得した情況などにある場合納税者は納税申告をしなければならない。

(8).改正後の個人所得税率表

表1(綜合所得適用)

ランク  年度納税所得額        税率(%)

1       36000元未満                     3

2       36000元~144000元           10

3       144000元~300000元      20

4       300000元~420000元      25

5       420000元~660000元      30

6       660000元~960000元      35

7       960000元~                  45

 

表2(経営所得適用)

ランク  年度納税所得額        税率(%)

1       30000元未満                     5

2       30000元~90000元            10

3       90000元~300000元       20

4       300000元~500000元      30

5       500000元~           35

以 上

 

最近の主要法令

法  律  名  称

施行日

1

全人代常務委員会の「中華人民共和国個人所得税法」の改正に関する決定」『重要法規解説』をご参照下さい)

2019/01/01

 

2

財政部、国家税務総局、応急管理部の「安全生産専用設備企業所得税優遇目録(2018年版)」の配布に関する通知」

2018/01/01

3

国家市場監督管理総局弁公庁の「偽造劣等商品の製販違法行為の打撃力の強化に関する通知」

2018/08/01

4

国家税務総局の「全国にわたる一般納税人登記ネット処理の推進に関する通知」

2018/08/06

5

最高裁の「上海金融裁判所案件管轄に関する規定」

2018/08/10

6

国家市場監督管理総局の「企業登記簡易抹消改革の更なる推進に関する通知」

2018/08/24

7

最高裁の「裁判所による財産処置参考価格確定若干問題に関する規定」

2018/09/01

8

全人代常務委員会の「中華人民共和国電子商務法」

2019/01/01

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。