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「署名捺印」と「署名、捺印」の違いは?

 

1、事件1

  北京市にある家具販売センター(以下、A社という)は、ある機械メーカー(以下、B社という)との間で輸入代理契約を締結し、契約の履行を巡り、一審と二審を経たA社はその判決に何れも不服とし、最高裁に再審を求めた。

 その二社間の争議の焦点は「本協議書は双方が署名捺印後発効する」と約束しており、その発効条件としては双方の「署名」と「捺印」とを同時に並べるかどうかである。

 最高裁は、判決に関する意見としては、一審の審理中の司法鑑定の結論により、「協議書」におけるA社の社印印字は工商局に届出た資料に捺印した印字と同一の公印によるものであり、A社の法定代表者またはその委任代理人の署名はないが、「協議書」はA社の真実意思を表すに足りる。「協議書」にB社の法人代表者の署名だけで、その公印は無いが、B社は「協議書」の真実性を否定していない。従って、「協議書」は真実、かつ有効であるとの一審と二審の認定は不当ではなく、A社が「協議書」の真実性及びその効力を認めないための再審を申し出た理由は成立しないものと判定した。

2、事件2

 

 浙江省にあるA有限公司(以下、A社という)はS銀行N市支店(以下、B支店という)と融資返済協議書を結んだ後、紛争が生じた。

 その二社間の争議の焦点は「当該協議書における「署名」、「捺印」の間にある読点(、)をどう理解すべきか、即ち、署名と捺印とを同時に並べるかそれともそのうちの一つがあれば、協議書が直ちに発効すると認定できるかどうかである。

 

 最高裁は、判決に関する意見としては、当該協議における「署名、捺印」の間にある読点(、)をどう理解すべきか、即ち、署名と捺印とを同時に並べるかそれとも其のうちの一つがあれば、協議書が直ちに発効するかについて、双方当事者が署名した協議書に示された「署名、捺印」にある読点(、)は並列語彙間の区切りであり、その前の「署名」と後の「捺印」とは並列語彙であり、それは署名と捺印とは並列関係にあり、署名と捺印とを並べる条件のもとで、当該協議書は初めて発効できると示される。双方当事者がその条項を約束した意思表示が明確、真実であるものとして有効であると認めるべきである。また、双方当事者が締結した「返済協議書」の内容から、双方の捺印と責任者の署名欄を予め設けてあり、B支店は責任者が署名した上、捺印した。一方、A社は法定代表者の署名だけで捺印しなかったと明らかである。A社が「返済協議書」に捺印しなかったことは、双方が約定した発効条件の不備をもたらした。従って、B支店が当該協議書に基づいて権利を主張するための事実根拠は不十分であり、二審裁判所は支持を与えない。一審裁判所は「返済協議書」が既に発効していると認め、かつ当該協議に決めた金額によってA社に融資元金を返済すると判決したことは妥当ではなく、改正すべきと判定した。

3、コメント

(1)契約における「署名捺印」と「署名、捺印」の表記について上記の事件1と事件2に対する最高裁の判例によってその契約発効条件として区別されていることを示唆される。

(2)契約において「署名捺印」の場合には「署名」+「捺印」を意味しないが、「署名、捺印」の場合には「署名」+「捺印」を必要とする。

以 上