茨城県上海事務所 > 中国法律情報 > 最高裁の信用を失う被執行人名簿情報の公布に関する若干規定

最高裁の信用を失う被執行人名簿情報の公布に関する若干規定

 最高裁は2013年7月1日付「最高裁の信用を失う被執行人名簿情報の公布に関する若干規定」(以下、本規定という)を公布し、今年10月1日より施行する。本稿では合計七条で構成される本規定の概要を以下の通り取り纏めます。

一、背景

 最高裁の統計によれば、全国の裁判所では2008年から2012年までに強制執行の判決を受け、財産を有している被執行人の案件の中で、そのうち70%以上の被執行人に逃避、回避、または暴力で執行を拒否する行為(裁判提訴前に預金を引き出したり、不動産を転売したりするなどの妨害行為)が存在しており、自ら履行する者は30%に過ぎない。

 長年、被執行人の故意に執行を逃避した行為によってもたらされた、いわゆる「裁判難」「執行難」という言葉もそのまま社会に定着し、勝訴してもただ一枚紙しか得られない「執行難」は司法の威信を揺るがしている。本規定の施行の狙いとしては社会与信システムの構成の推進、更に「信用を失う者のブラックリスト」の対外公布を通じて、その名誉、信用にダメージを与えることによって、「執行難」の解消に繋げることにあると言えよう。

二、本規定の概要

 被執行人は履行能力を有しながら発効した法律書類に決められた義務を履行せず、且つ下記のいずれかの状況に当たる場合、裁判所は信用を失う被執行人として名簿に取り入れることによって、与信懲罰を与えるものとする。

(1)証拠を偽造し、暴力脅威等方法で執行を妨害、拒否した。

(2)虚偽訴訟、虚偽仲裁または財産を隠蔽、移転する方法で執行を回避した。

(3)財産申告制度に違反した。

(4)高額消費令の制限に違反した。

(5)被執行人は正当の理由なし執行和解協議の履行を拒否した。

(6)その他の履行能力を有するが、発効済法律文書に決めた義務の履行を拒否した。

  各級裁判所は、信用を失う被執行人の名簿情報を最高裁における信用を失う被執行人の名簿データに入力し、最高裁はその名簿データをインターネット上に公開し、同時に各級裁判所は公告欄、新聞、ラジオ、TV、ネット、新聞公表会等により公開する。

 公開される信用を失う被執行人の名簿情報には、被執行人である法人或いはその他の組織の名称、組織機構番号、法人代表或いは責任者の姓名、被執行人である自然人の姓名、性別、年齢、身分証明書番号、発効済法律文書に決められた義務及び被執行人の履行状況、被執行人の信用を失う具体的状況、執行根拠とする作成単位及び文書番号、執行案件番号、立案時間及び執行裁判所が包まれている。

 裁判所より信用を失う情報データを通報された政府関係部門、金融監査機構、金融機構、行政職能部門及び業界協会等は、政府入札、行政審査、政府援助、融資、市場参入、資質認定等については、信用を失う被執行人に与信懲戒を与えるものとする。

 信用を失う被執行人が、以下の何れかの状況の一つに当たる場合には、裁判所はその情報を元に、信用を失う被執行名簿より削除しなければならない。

(1)発効済の法律書類に決めた全ての義務を履行完了。

(2)執行申請人と執行和解協議に達し、且つ履行完了を執行申請人が確認済。

(3)裁判所は執行の終結を裁定した。

3、新主要法令

法  律  名  称

施行日

1

最高裁の「信用を失う被執行人名簿情報の公布に関する若干規定『重要法規解説』をご参照下さい)

2013/10/01

2

国務院の部分行政法規の廃止及び修正に関する決定

2013/07/18

3

国家外貨管理局のサービス貿易外貨管理法規の公布に関する通知

2013/07/18

4

商務部のWTO貿易救済争議裁決執行暫時規則

2013/07/29

5

財政部、国家税務総局の部分零細企業増値税及び営業税徴収暫時免除に関する通知

2013/08/01

6

国家税務総局の全国での営業税から増値税徴収へのテスト展開に関連する徴収管理問題に関する公告

2013/08/31

7

中華人民共和国工業と情報化部の「電信とインタネットユーザー個人情報保護規定」

2013/09/01

8

中華人民共和国出入国管理局の外国人出入国管理条例

2013/09/01

9

中華人民共和国工業と情報化部の「インタネット接続サービス規範」の公布に関する通知

2013/09/01

10

国家税務総局、国家外貨管理局のサービス貿易など項目対外支払税務届出関連問題に関する公告

2013/09/01

11

国家質量監督検験検疫総局の「出入国検験検疫与信管理弁法」の公布に関する公告

2014/01/01

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。