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「財産保全案件取扱の若干問題に関する最高人民法院の規定」についての解説

 2016年11月7日、最高人民法院は「財産保全案件取扱の若干問題に関する最高人民法院の規定」(以下、「本規定」という)を公布し、2016年12月1日より施行する。計29条で構成される「本規定」は訴訟中の財産保全の時限、金額基準、方式などに関して明記され、其の要点を以下の通り取りまとめます。

1.背 景

 現行の「民事の訴訟法」及び関連する司法解釈に訴訟中の財産保全の時限、金額基準、方式などに関して明記されず、事件を裁判する際、裁判所による自由裁量権が大きく、不確定さが多く、保全難などの問題が突出している。「本規定」の公布施行はこうした状況を変え、債権の保障、債務者による財産の隠蔽、移転の阻止、並びに債権者の合法権益の保護を実現するためである。

 

2.要 点

(1)「本規定」は、立案、審判法院による財産保全の裁定及び法院執行機構による裁定の実施を決 めたことによって当事者及び弁護士が案件にかかる財産保全を追跡するために方向性を明示し、司法の手順を統一させた。

(2)財産保全を裁定する時限及び執行時限を明確化した。今までの非緊急状況にある訴訟前財産保全に対して時限を要求されず、人民法院にすべての自由裁量権限を与え、財産保全手続きの長引きと不確定をもたらした。「本規定」第4条は、人民法院が訴訟中の財産に対して緊急事態の場合は、必ず48時間内に、非緊急事態の場合は申立受理後の5日間以内に、裁定を下さなくてはならないと定めている。

(3)訴訟財産保全の担保金額を合理的に調整した。従来の担保基準は人民法院によって20%から100%まで異なった。「本規定」第五条は、担保金額は担保請求金額の30%まで、保全申請の財産は争議対象物である場合、担保金額は争議対象物価値の30%までとする。利害関係者は、訴訟前財産保全を申し立てる場合、保全申請金額に相当する担保を提供しなくてはならない。特別な場合、人民法院が情状を酌量することができると定めている。

(4)「本規定」は、人民法院が受け入れる担保方式として、自主財産と他人財産の担保、保険会社の保険証券、金融機関の自主保証状を取り入れた。また、人民法院が申立人に担保提供を求めなくてもよい状況として、医療費用、労働報酬、労災賠償、交通事故人身損害賠償の請求、保全を間違う可能性の少ない判断などを列挙した。

(5)今までの法律実務では、被申立人の財産手掛かりは申立人が提供しなければならない。人民法院は強制執行手続きに入った後こそ、初めて被申立人の財産情報を調べることができる。「本規定」は、申立人は、訴訟財産保全を申立てる際、客観的な原因で明確な被保全財産情報が無く、具体的な財産の手掛かりを提供した場合、人民法院は財産保全措置を取ることを裁定できる。訴訟保全裁定に具体的な財産保全を明確にされない場合、裁定の執行過程において、申立人はネット検索捜査システムを有する執行法院に対して書面申請を行い、当該システムにより被申立人の財産を確認することができる。申立人が検索捜査の申請をした場合、執行法院は、当該システムを利用して、保全裁定をした財産又は保全金額の範囲内の財産に対して検索捜査を行い、それに対して封印、差押、凍結等の措置をとることができると定めている。(6)司法実践中、債務者に生産生活難をもたらさせるために悪質な保全を申立てたり、悪意に保全解除を遅延したり、関係のない他人財産などを故意に保全したりした問題がしばしば発生し、債務者と案外者の合法権益を侵害した。それらの問題を解決するために、「本規定」は下記の四つの方面から取り決めている。


①「本規定」第13条は、被申立人に対してその多数の財産を保全できるが、保全目的を実現できる前提で人民法院はその生産経営活動への影響度の小さい財産の保全を選択し、工場建物、機械設備などを保全する際、被申立人による保管を指定した場合、それに継続使用を許可しなければならない。第20条は、財産保全期間中、債権者の合法権益を破らない下で債務者による被保全財産の自主処分を許可すると定めている。
②「本規定」第15条は、対象物を越えた土地、建物など不動産保に部分保全を原則に、銀行口座の保全の際、凍結金額を明確にしなくてはならない。
③「本規定」第23条は、法によって仲裁請求を却下された6種類情況下にあたり、保全申立人は直ちに保全を解除し、さもなければ、これで賠償責任を負わなくてはならないと定めている。

④「本規定」第26条は、当事者、利害関係者は保全行為違法が違法と認め、異議を申入れた場合、人民法院は法によって審査しなければいけないと定めている。

以 上

主要法令

 

法  律  名  称

施行日

1

最高人民法院の「財産保全案件取扱の若干問題に関する最高人民法院の規定」『重要法規解説』をご参照下さい)

2016/12/01

2

国務院の「汚染物排出制御許可制実施方案の配布に関する通知」

2016/11/10

3

国務院の「統一の緑色産品基準、認証、標識体系構築に関する意見」

2016/11/22

4

国務院の「危険化学品安全綜合処理方案の配布に関する通知」

2016/11/29

5

最高人民法院の「第八回全国法院民事商事審判工作会議(民事部分)の紀要」

2016/11/30

6

最高人民法院の「独立保証状紛争案件審理若干問題に関する規定」

2016/12/01

7

国家工商行政管理総局の「広告配布登記管理規定」

2016/12/01

8

税関総署の「加工貿易項目下の消耗性部材管理の規範に関する公告」

2017/01/01

9

全人代常務委員会の「中華人民共和国インターネットワーク安全法」

2017/06/01

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。