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契約締結上の過失について

一、事実経緯

 2016年5月9日、上海にある技術開発会社(以下、A社という)はB氏にオファーレターを出し、B氏の採用の決定を示した書類に試用期間、給与基準などを提示し、採用資料の提出、健康診断の後、採用の手続きを行い、労働契約を締結した。但し、健康診断が不合格の場合には採用されず、健診不合格の状況には伝染病、整理欠陥、職業障害などが含まれることを明確にしている。

 2016年8月9日、B氏は、病院へ健康診断、同日に元の会社に辞表を提出し、1週間後、元の会社はB氏の辞職に同意した。病院の健康診断書にはB氏の右腎臓と左腎臓にそれぞれ腫瘍と結石が発見したと記載があり、A社はB氏の健康診断の不合格を理由に、2016年10月10日、B氏を不採用とした。B氏はA社に提訴し、損害賠償を求めた。

 

二、裁判判決

 裁判所は、本件を審理、A社がB氏にオファーレターを出し、B氏が署名したことは双方間の労働契約の締結を約束した。よって、労使双方の何れかの一方はオファーレターの約束に違反し、労働契約を締結しない場合には、違約責任を負わなければならない。本案のA社がB氏にオファーレターを発行した後、労使双方が労働契約の締結段階にあり、B氏がA社を大いに信用したうえ、元の会社を退職したが、最終的にA社の過失によって正式な労働契約は締結できなかった。A社が賠償責任を負うべきか否かについて、B氏の健康診断に関する病院の検査結果は、国が定める勤務に不適な病気種類に該当しないだけでなく、オファーレターにも明文化されていないため、A社はB氏と労働契約締結を拒否したことは明らかに妥当ではなく、一定の錯誤が存在している。一方、B氏は健康診断書を出した前に元の会社を退職したことは軽率であり、それによって相応の責任を負担しなければならない。

 従って、双方の責任分担を考慮し、A社がB氏の合理的な損失に部分的な賠償責任を負うとの判決を下した。

 

三、コメント

1、契約締結上の過失とは、契約の締結に至るまでの段階で当事者の一方に帰責すべき原因があったために相手方が不測の損害を被った場合、責めを負うべき当事者は相手方に対して損害を賠償すべきとする理論をいう。本案A社のこのような違約責任は、民法上の「契約締結過失責任」に当たる。

2、使用者の潜在的なリスクを軽減、不必要なトラブルを回避するためにオファーレターの内容について注意すべきである。

(1)オファーレターに法律リスク回避の条項を追加し、オファーレターと労働契約との関係を明確にし、通常、労働契約を正式に締結した後、オファーレターは労働契約の付属書類とする。但し、内容が一致しない場合、労働契約に準じ、契約に触れていない部分に関してオファーレターに準じることを決める。また、オファーレターの発効条件を約束できる。例えば、オファーレターに労働者のサインだけを発効条件とせず、入職健診、身辺調査などの合格を必要とし、またオファーレターの失効または解除の条件を取り入れる。

(2)オファーレターに採用条件を詳しく約束し、労働者の試用期間中に採用条件に合うかの根拠とする。

 

重要法規解説

 

「製造業製品とサービス品質向上の促進に関する工業と情報産業化部の実施意見」

 

 2019年8月29日、工業と情報産業化部は「製造業製品とサービス品質向上の促進に関する実施意見」(以下、「意見」という)を発表し、19条の建議によって構成されている「意見」の主な内容は以下の通りです。

 

一、背景

 中国は多くの製品を作っているが、高付加価値、核心技術、キーパーツ生産、製品の品質とブランドはまた確立されておらず、他方、企業の雇用コスト増、経営圧力も日増しに高まっている。中小企業への融資のハードルが高く、伝統製造業の優位性が徐々に失い、また労働集約産業の製品は東南アジア諸国との競合が顕著化している。企業の競争力を引き上げるために、2022年までに製造業品質の全体的なレベルアップ、且つ持続的な環境作り、業界による品質の管理体系の効率化を実現し、国家、業界の基準を作り上げるよう、「意見」には目標が示されている。

 

二、主な内容

1、2022年までに、いくつかの国家標準、業界標準と団体標準のセットの標準を制定し、業界の品質向上の指導下で、10の業界以上または分野で品質レベル別の業務メカニズムを確立し、重点製品の全ライフサイクルの品質追跡メカニズムを充実させ、企業の製品品質を向上させる。

2、企業は技術革新に励み、個性的なカスタマイズ、フレキシブル生産を展開し、製品を多種化し、差異化の消費ニーズを満たす。また、情報化と工業化の融合管理体系を継続的に推進し、品質管理におけるクラウド計算、ビッグデータ、人工知能などの次世代情報技術の応用を推進する。

3、企業は品質を基礎とするブランドの発展戦略を立て、ブランドの内包を豊かにして、ブランドのイメージを昇格させるよう導き、ブランドの宣伝普及を強化し、消費需要を誘導し、消費を強め、企業の製品品質の向上を促進する。

4、4の分野にわたる製造業を次の段階の品質向上の重点とし、具体的には、原材料工業供給の品質を向上させ、装備製造業の品質競争力を増強させ、消費財工業の品質のレベルアップを促進し、情報技術産業のミドル・ハイエンド化を推し進める。

5、原材料の工業供給の品質を向上させ、鉄鋼、セメント、電解アルミニウム、平板ガラスなどの伝統産業のモデルチェンジとレベルアップを加速し、省エネで効率的な生産プロセスを普及させ、グリーン化、スマート化の改造を実施し、全生産プロセスにおける品質オンラインモニタリング、診断と最適化システムのR&D、応用を奨励し、レアアースのグリーン採掘と鍛錬分離技術の開発を支持し、レアアースの新材料及びハイエンドへの応用産業の発展を加速化する。

6、5GとIOT関連産業の発展を加速し、情報化と工業化の融合発展を深化させ、工業インターネットプラットフォームを構築し、工業インターネットの新型インフラ整備を強化し、キーインフラソフトウェア、工業設計ソフトとプラットフォームソフトウェア開発応用を推進し、ソフトウェアエンジニアリングの品質とネットワーク情報の安全レベルを向上させる。

 

主要法令

法  律  名  称

施行日

1

「製造業製品及びサービス品質の向上の促進に関する工業と情報産業部の実施意見」(『重要法規解説』をご参照下さい)

2019/08/29

2

国家発展と改革委員会弁公庁の「市場主体による公共信用総合評価結果の応用及び送達に関する通知」

2019/09/01

3

国務院の「事中事後監督の強化及び規範に関する指導意見」

2019/09/06

4

国家移民管理局の「出入国証明身元認証管理弁法(試行)」

2019/09/11

5

財政部、国家税務総局の「生活性サービス業増値税追加控除政策の明確に関する公告」

2019/09/30

6

交通運輸部、国家税務総局の「「ネットプラットフォーム道路貨物輸送経営管理暫定弁法」の配布に関する通知」

2020/01/01