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上海市労務派遣用工管理の規範に関する若干意見(試行)

上海市人事資源と社会保障局は2012年2月20日付「上海市労務派遣用工管理の規範に関する若干意見(試行)」「以下、「試行意見」という」を公布し、即日実施しました。本稿では実務上の概要を述べます。

 

一、上海市では「社会保険法」を貫徹し、「綜合保険」を「都市保険」に取り入れ、外地従業人員の公平な保険加入の権利保障に注力した。但し、一部企業は、労務コストの上昇を抑える為に、異なる地域の労務派遣公司と個別の労務派遣契約の方式を採用し、労務派遣公司の登記所在地の社会保険、給与基準に基づいた派遣社負の社会保険を納付し、給与を支払ったことを明らかにした。同一企業で異なる社会保険の納付方式がとられ「仕事同様給与異なり、仕事同様保険異なり」という異状をもたらした。上海市人事資源と社会保障局は「試行意見」の公布、実施によってそうした弊害を除去することを狙っていると考えられる。

 二、「試行意見」では、外省市労務派遣会社は上海市で支社機構設立条件を満たし、且つ法により工商部門に登録手続きを行った場合、上海市で労務派遣の経営活動を展開できると明確した。

三、外省市労務派遣会社が上海市に子公司または分公司を設立した場合、その子公司または分公司は受入する外地労務派遣従業人員の為に社会保険登記を取り扱い、且つ上海市の基準に基づいて外地労務派遣従業人員のために上海市で社会保険を納付しなければならない。

四、外省市労務派遣会社が上海市に子公司または分公司を設立しなかった場合、労務派遣協議の当事者双方は、協議において上海市における使用会社が外地労務派遣従業人員のために社会保険を加入し、且つ上海市基準に基づいて社会保険を納付することを明記しなければならない。

五、使用会社は上海市に子会社或いは分公司を設置しなかった外省市労務派遣会社が派遣した従業人員を使用する期間中、外地労務派遣従業人員と争い、外地労務派遣従業人員より労災、医療など社会保険及び労働報酬など待遇を求められた場合、使用会社は「労働契約法」の関連規定に基づいて、連帯責任を負わなければならない。

六、中国では、「上は政策、下は対策」という言葉があるように、使用会社と外省市労務派遣会社は上海市と他の地域の格差を利用し、上海市労務派遣市場の秩序に混乱を齎した。本件は、既に外省市労務派遣会社の派遣従業人員を受入れた上海市における使用会社に対して合理的な過渡期を与え、外省市労務派遣会社が上海市での子公司または分公司の設立、派遣従業人員の募集の登録などで今後課題が増えそうである。

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事です