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未届出の工場建物賃貸契約は有効であるか

一、事実経緯

 2007年2月、防水製品の製造会社であるA社は、物流会社であるB社と間でA社所有の600平米の工場建物をB社に倉庫として年間家賃15万元で4年間賃貸する契約を締結した。

 2009年3月に入って、A社は家賃を支払わないB社に催促したが、B社は常に資金繰りが困難であることを理由に、状況が好転すれば必ず支払う約束をした。

 2011年1月、A社は家賃の支払を一切履行しないB社に即時家賃の支払を求め、さもなければ、在庫の貨物を差押えると通告した。しかしながら、B社はA社の工場建物が登記されず不動産権利証を有しないこと、建設部配布の「都市不動産賃貸管理弁法」を盾に、B社との賃貸契約が不動産取引センターに届出されていないことを理由として、契約は無効であると主張し家賃の支払を拒否した。

 2011年3月28日、A社はやむを得ず、工場所在地の裁判所にB社を提訴した。

 

二、判決の旨

 2011年6月8日、裁判所は開廷、双方の主張を審理し、最高裁の「契約法適用若干問題に関する解釈(一)」の第4条の「契約法実施後、裁判所は契約の無効を確認する場合、全国人民代表大会及びその常務委員会の制定した法律及び国務院の制定した行政法規を根拠とすべきであり、地方法規、行政規章を根拠としてはならない」との規定を適用し、建設部の「都市不動産賃貸管理弁法」は部門規章に属するため、契約効力を認定する根拠とすることができないと認め、A社の主張を支持し、B社に対して未払い家賃の支払及び本件訴訟費の負担を命ずる判決を下した。

 

三、コメント

1.A社は、自社所有の工場建物をB社に賃貸しその工場建物の不動産権利証を取得せず、また賃貸契約を登記せずとも、その効力は有効であると認められる。従って、B社はA社に対して2年間の未払い家賃を支払うべきである。B社が支払を履行しない場合、A社はその建物内の貨物を差押える権利を有する。当然、差押えの貨物の価値はその未払い家賃に相当するものである。

2.商事行為の中では、取引の安全及び効率を守ることを主な原則として、賃貸契約の当事者は物権関係を債権関係と区別して対処しなければならない。該当契約が当事者の誠実な意思のもとで締結され、また法律規定に違反せず、国家、集団及びその他の第三者利益を損害しない場合、不動産権利証を取得しないことは賃貸契約の有効成立に影響しない。

3.工場建物賃貸契約の届出登記は賃貸契約を発効させる要件ではなく、該当登記は権利設定ではなく権利証明の作用しか有せず、届出登記は該当契約の第三者に対抗する効力を賦与され、すなわち、登記の賃借人が優先的な購入権を享有するものである。

4.民事商事行為上は有効であるが、行政責任、例えば、税収徴収管理によって発生した行政責任を免れることはできない。

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。