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監事は名目職ではない

一、監事の権利義務

 会社の監事は、会社の内部統治の監督機関として、会社の株主、取締役、高級管理者の行為を監督する法定権利を持っているが、実際に友達に頼まれ会社の監事をしている人もいる。そのため監事は会社の日常管理にも参与しないし、投資者でもないため、つまり「名目職」であると思われがちである。

 会社法は監事に監督権利を与え、権利があれば義務があり、義務の履行を怠り、会社の高級管理者と結託したり、高級管理者の違法行為を放任したりする場合、賠償義務を負う必要がある。

 会社は株主のものであり、それを董事か高級管理者という一部の人間によって専断させない防波堤が、監事を設置している根幹理由である。

 

二、監事の法定義務違反の判例

判例一

 広州市中級裁判所は、その審理した比翼公司と迅居会社の売買契約紛争執行裁定案(案件番号:粤01執复318号)における、汪氏は、事件債務の発生期間及び案件立案の執行時に、迅居会社の監事を在任しており、迅居会社が執行にあたる財産がないことに対して、迅居会社の監事として会社法における債務履行に影響を与える直接責任者に属しているため、黄浦地裁が汪氏に対する消費制限措置を取ったことは不当ではなく、当裁判所は支持する。

【適用根拠】

「被執行者の贅沢消費制限に関する最高裁若干の規定」第一条第一項の規定は、「被執行者が通知書の指定した期間に発効する法律文書で定められた給付義務を履行していない場合、裁判所は贅沢消費制限措置を講じて、その贅沢消費及び生活または経営に必要ないものを制限することができる。同規定第三条第二項の規定は、「被執行者が単位である場合、贅沢消費制限措置を講じた後、被執行者及びその法定代表者、主要責任者、債務履行に影響を与える直接責任者、実際支配者は前項に決めた行為を実施してはならない。」

 

判例二

 浙江省高裁は、審理した李氏、甘氏の欧卡姿公司の利益損害責任紛争事件【事件番号:(2017)浙江民終622号】における欧卡姿公司の董事李氏が、監事甘氏にその個人口座で長期にわたり会社の代金を預けさせ、欧卡姿公司に損失を与えたため、李氏、甘氏は共に欧卡姿公司に相応する代金を返還し、利息損失を賠償すべきものと欧卡姿会社の株主艾氏は、2016年1月15日に欧卡姿公司及び董事李氏宛書面で、監事甘氏の会社の利益を破った行為に対して裁判所に提訴するよう要求したが、欧卡姿公司及び李氏は要求書を受けた日から三十日以上も訴訟を提起していなかったことに関して、艾氏は自分の名義で本案の提訴権利を有すると認める。

【適用法律】

「中華人民共和国会社法」第147条の規定により、会社の董事、監事、高級管理者は法律、行政法規と会社定款を遵守し、会社に対して忠実な義務と勤勉義務を負わなければならない。

 

判例三

 珠海市中級裁判所が審理した盧氏、博朗教育公司の権利侵害責任紛争【事件番号:(2019)広東省04民終2466号】における上訴人が言う、博朗会社法定代表人の余氏が博朗会社の利益を損なう行為に改正を拒んだことに鑑み、盧氏はPOSマシン一台、金庫一つ及び業務資料(青い書類ファイル一つ、ノート二冊、定款一部、精算書若干)の保管は、余氏による博朗会社の利益を損なう行為への賠償訴訟用の関連証拠を確定するためだけであり、その間に何の間違いもないと述べた。裁判所は、たとえ盧氏は会社の株主、監事であっても、その権利の行使は合法的なルートを取るべき、会社の財産を強行的に持ち去ってはならない。盧氏は余氏がその個人利益を損なった行為があると主張するなら、合法的な方法を採用しなければならないと考えた上で、盧氏が博朗公司の財産を強行的に持ち去ったことは違法であり、その持ち出された物品の中には一部の学生募集資料が含まれ、研修機関にビジネスチャンスをもたらし、一定の商業価値を持っているため、一審は諸要素を情状酌量したうえ、盧氏が博朗会社に経済損失30000元を賠償する、という判決を下したことは合理であるものとして維持する。

【適用法律】

「中華人民共和国会社法」第149条の規定により、董事、監事、高級管理者が会社の職務を執行する時、法律、行政法規又は会社定款の規定に違反し、会社に損失を与えた場合、賠償責任を負わなければならない。

 

三、まとめ

 監事会または監事は、社内監査機関として、会社の管理に核心的な役割を果たしている。中国の《会社法》は会社の董事あるいは高級管理者が監事を兼任してはならないと規定しており、すなわち監事その監督役割を会社の経営職能の制約から離れ、会社の利益が損なわれないよう、会社の内部の高管と董事、株主への監督を専念させる。従って、監事は、「監事」の法定権利を背かないように以下の点に注意してほしい。

1、合法的で、速やかに監督義務を履行し、明らかに異常な経営行為に対して会社の高管、董事に説明を求め、今後損失が発生する際、責任を負わせざるをえない状況を避けるようにする。

2、株主質問に対して速やかに回答し、確実に会社法第百五十一条の起訴要求を受けた場合、速やかに回答し、起訴または不起訴の原因を説明する。

3、高管の不法行為に参与することを絶対にしないことを自覚する。もし高管の不法行為に遭ったら、直ちに書面で返答して制止しなければならない。放任または黙認は会社の利益を共同で侵害すると見なされる恐れがある。

 

重要法規解説

 

「労働紛争事件の審理における法律適用問題に関する最高裁の解釈(一)」

 

 「労働紛争事件の審理における法律適用問題に関する最高裁の解釈(一)」(以下、「新解釈」という)は2020年12月25日に最高裁裁判委員会第1825回会議で可決、公布され、2021年1月1日から民法典とともに正式に施行され、元四部労働法司法解釈は廃止される。新解釈は全部で54条あり、下記の問題についてどのように決められたかを確かめてみます。

 

1、どのような事件が労働争議事件に属さないか?

答:第二条 次の紛争は労働紛争に該当しない。

(一)労働者が社会保険取扱機構に社会保険金の発行を求める紛争。

(三)労働者が労働能力検定委員会の障害等級鑑定結論又は職業病診断鑑定委員会の職業病診断鑑定結論に対する異議紛争。

(二)~(六)省略
 

2、仲裁裁決の一部に不服がある場合、どうにかなるか?  

答:第十六条 労働紛争仲裁機構が仲裁裁決を下した後、当事者は裁決の一部の事項に不服があり、法により訴訟を提起した場合、労働紛争仲裁裁決には法的効力が発生しない。

 

3、労使間の締結した労働契約解除協議書は必ず有効であるか?

答:第三十五条 労働者と使用者が労働契約の解除又は終了に関する手続き、賃金報酬の支払い、残業代、経済補償又は賠償金等で合意した協議は、法律、行政法規の強制規定に違反せず、かつ詐欺、脅迫又は人の難儀につけこむ状況が存在しない場合、有効と認定しなければならない。

 前項の合意に重大な誤解があり、又は公平を著しく失い、当事者が取り消しを請求する場合、裁判所は支持を与えなければならない。

 

4、使用者は労働者と口頭で労働契約を変更し、労働者は後悔し、その契約が有効であるか?

答:第四十三条 使用者は労働者と協議し合意し労働契約を変更し、書面形式を採用していないが、実際に労働契約を口頭変更し履行してから一ヶ月を超え、変更後の労働契約内容は法律、行政法規に違反せず、かつ公序良俗に違反しない。当事者が書面形式を採用していないという理由で、労働契約の変更無効を主張した場合、裁判所はそれを支持しない。

 

5、残業事実立証責任はどうやって分配するか?

答:第四十二条 労働者が残業代を主張する場合、残業の事実の存在について立証責任を負うべきである。しかし、労働者は使用者が残業の事実を把握していることを裏付ける証拠があり、使用者が提供しない場合、使用者が不利な結果を負担する。

 

6、労働者が退職を余儀なくされ、経済補償金を支払う必要がある場合?

答:第四十五条 雇用単位が以下のいずれかに該当し、労働者が労働契約の解除の申し入れを余儀なくされた場合、使用者は労働者の労働報酬と経済補償を支払わなければならず、そして賠償金を支払うことができる。

(一)暴力、脅迫または人身の自由を不法に制限する手段で労働を強制した場合。

(二)労働契約の約定通りに労働報酬を支払っていない又は労働条件を提供していない場合。

(三)労働者の賃金を勝手に減らし、または無断で遅配した場合。

(四)労働者の労働時間延長賃金報酬の支払いを拒否した場合。

(五)現地の最低賃金基準を下回って労働者の賃金を支払う場合。

 

7、社内規則と労働契約の内容が違う場合の優先順位がどうなるか?

答:第五十条 使用者が労働契約法第四条の規定に基づき、民主的手順により制定された規則制度は、国家の法律、行政法規及び政策規定に違反せず、且つ、労働者に公示した場合、双方の権利義務を確定する根拠とすることができる。

 使用者が制定した社内規則制度は集団契約又は労働契約に約定された内容と一致しない場合、労働者が契約の約定を優先的に適用することを要求する場合、裁判所は支持しなければならない。

 

主要法令

法  律  名  称

施行日

1

最高裁の「労働紛争事件の審理における法律適用問題に関する解釈(一)」『重要法規解説』をご参照下さい)

2021/01/01

2

国家税務総局の「一部納税人個人所得税控除納付方法の更なる簡便化に関する公告」

2021/01/01

3

国務院の「動産と権利担保統一登記の実施」に関する決定

2021/01/01

4

最高裁の「「中華人民共和国民法典」の時限効力の適用に関する若干規定」

2021/01/01

5

税関総署の「中古機電産品輸入輸送前検査監督管理実施細則の配布に関する公告」

2021/01/01

6

国家発展改革委員会、商務部の「外商投資安全審査弁法」

2021/01/18

7

税関総署の「中華人民共和国税関行政許可管理弁法」

2021/02/01

8

税関総署の「中華人民共和国税関輸出入貨物減免税管理弁法」

2021/03/01