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「中華人民共和国出入国管理法」についての解説

 2012年6月30日、全国人民代表大会常務委員会は、「中華人民共和国出入国管理法」(以下、本法という)を審議、可決し、2013年7月1日から実施する。その概要を以下の通り纏めました。

 

一、背景

 公安部の統計によれば、1980年、中国への外国人入国者数は74万人に過ぎなかったが、中国経済の急速な発展に伴い、2011年には2711万人まで増加した。外国人入国者数が年10%増加してきたことに伴い、不法就労、違法犯罪行為などさまざまな社会治安の問題も生じてきた。このような社会変化に適応できなくなる現行の出入国管理法を見直す必要があるとして2003年10月、全人代の外事委員会の建議を受入れた国務院をはじめ、政府関係部門による本法の起草及び度重なる修正を加え、約10年の歳月を経て、制定、公布された本法は現代の社会情勢への対応が期待されている。

 

二、外国人の永住権

 本法では、中国経済社会発展に卓越した貢献またはその他の中国国内永住居留条件を満たした外国人は本人の申請及び公安局の批准を経て、永住居留資格を取得するとする。

 

三、外国人の滞在又は居留期間

 本法では、ビザまたは滞在証明書を所持する外国人の最長滞在期限は180日を超えてはならないとする。また、外国人の就業類居留証明書及び非就業類居留証明の有効期間は最短それぞれ90日及び180日、最長5年とし、ビザ延長滞在期限を規範し、すなわち累計してビザに従前記載された滞在期限を超えてはならないとする。

 

四、外国人の就業及び居住許可

 外国人は中国国内で就業する場合、規定により、就業許可及び就業類居留証明書を取得しなければならない。いかなる単位及び個人も就業許可及び就業類居留証明書を取得していない外国人を雇用してはならない。

 外国人は規定により、就業許可及び就業類居留証明書を取得せず、就業許可の範囲を超えて、中国国内で就業し、外国人留学生については所定の職位範囲または期限を超えて、中国国内で就業した場合、不法就業に属する。

 本法によって、国家安全及び公共安全を保護するために、公安機関及び国家安全機関は外国人及び外国機関に対して、特定の地域での居住や事務所の設立を制限することができる。許可を経ないで、外国人は外国人の通行制限がある地域に入ってはならない。外国人あるいは外国人留学生を雇用した単位は規定により、所在地の公安機関に関連情報を報告しなければならない。

 

五、罰則

 本法では、外国人のために虚偽の招聘状或いはその他の申請書類の発行に対する罰則を追加したほか、拘留処罰を増設した。

 外国人の不法就業に対する罰金を1000元以下から、5000元以上2万元以下までに引き上げる。

 入国後、ビザ種類に相応しくない活動に従事した外国人に対して、国際の慣例によって、公安局は期限付き出国に処することができる。また、公安局の処罰は最終決定であり、国外退去に処された外国人は、国外退去した日から10年以内は再入国できないものとする。

 外国企業の責任者が労働者の報酬を支払わず、出国し責任を逃避する問題に関して、国務院関係部門あるいは省、自治区、直轄市人民政府はその出国停止を決定することができるものとする。

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。