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中国内陸都市レポート~陝西省西安市編~

 2011年8月下旬、上海日本商工クラブ主催による「中国内陸部西安の市場・環境取り組み状況視察研修」が開催されました。本稿は中国西部最大の都市である西安市を視察した内容をご紹介します。

西安市の概要

 西安は、陝西省の省都であり、古くは中国古代の諸王朝の都となった「長安」である。

日本との関係も深く、遣隋使や遣唐使が派遣され、阿倍仲麻呂や空海などが長安に留学しており、留学生にはその後中国や日本で活躍した人物も多い。また、西安は世界的な交易路であるシルクロードの東の出発点としても有名であり、歴史的文化遺産も豊富である。現在は中国北西部から沿岸地域に向かう玄関口となっており、西安は各種交通機関の中国西部地域における要衝となっている。2010年末の人口は843万人。大幅な自主権を持つ副省級都市に指定されており、中国西部の情報、貿易、金融の中心となっている。かつては重工業の割合が高く、国防産業などの特殊工業に依存していたが、近年、高新技術産業開発区、経済技術開発区ほか「四区一基地」を設置し、先端技術の開発と産業転化を推進する経済政策が採用されている。

2011西安世界園芸博覧会

 「天人長安・創意と自然~都会と自然の調和・共存」をテーマにした2011西安世界園芸博覧会(4月28日から10月22日の日程で開催)を視察した。博覧会園区の総面積は418ヘクタール、そのうち水面面積が188ヘクタールを占め、人工湖を中心に総建設投資額が8.5億元に達したとのことである。

 園区は4つのランドマーク、5つのテーマ園芸パーク、3つの特別サービスエリアから成り、今回の視察時は2つのランドマーク(創意館、長安塔)に入場した。創意館は1日1.6万人が来館する博覧会一番の人気パビリオンであり、平日でも2、3時間の順番待ちを覚悟しなければならないほどだ。館内には温室栽培の草花や世界各地域の植物や生態景観が展示されており、じっくりと鑑賞できる。高さ90メートルの長安塔は園区のシンボルタワーであり、こちらも入館には長蛇の列に並ぶ覚悟が必要である。13階の展望台からは博覧会場を一望でき、館内には金の装飾品や銅車馬の模型などが展示されている。

 会期中の入場者目標は1,200万人とのことだが、訪れた時点で約7割の実績に達しているとのことで、当日も多くの中国人観光客で賑わっていた。会期後、園区は何らかのテーマパークとして生まれ変わるらしく、西安市の新たな観光スポットとなりそうである。

園内の様子

金色のバラ(創意館)

長安塔

長安塔からの眺め

西安市高新技術産業開発区(以下、西安ハイテク産業開発区)

 西安ハイテク産業開発区は、1991年に国務院の批准によって創立された最初の国家級ハイテク産業開発区であり、計画面積は107km²、すでに45km²が開発済みである。開発区内にはインテリジェントオフィスビルや工場施設はもちろん、居住環境、教育環境、レジャー、娯楽、ショッピング、医療施設などの整備や緑化も進められ、中国で最も美しいグリーンパークを目指している。交通インフラ整備も急ピッチで進められており、地下鉄も開通間近とのことであった。

 産業促進の推進体系も整備されおり、西安ハイテク産業開発区管理委員会が市政府の出張機関として条例に基づいた行政管理機能を持ち、投資者および進出企業へのプロジェクト審査許可、土地取得、建設計画、不動産証明書発行、戸籍受入、社会保険取扱、税務申告などが一つのビル内で手続きできるようになっている。

 20年間の発展を経て、開発区はIT、先端製造、バイオメディシンなどを支柱産業とし、近年は太陽光発電産業、新型素材産業、環境保護産業、コンテンツ産業などの新型業種を育て持続的な発展を目指している。開発区に登録した企業は14,000社を超え、外資系企業は約1,500社、うち日系企業は70社以上が投資している。西安には公立大学が47校、私立大学が40校あり、大学の数は北京に次いで2番目である。研究所や専門学校も多く、これらは開発区に進出した企業に豊富な人材資源を提供し、科学技術開発の強力なバックアップになっている。

開発区の様子

開発区の街並み

 日系企業視察

 ある日系企業を視察し、西安での経営環境などについて話を聞いた。西安商工クラブの登録社数は40社強とのことで、西安に駐在する企業関係の日本人は100名~150名、その他教師や留学生が100名程度居留している。西安は人件費が沿岸部より2~3割安く、大学が多いため優秀な人材を確保することが容易なうえに、地元志向が強いため定着率も良好とのことであった。また、電力供給が安定しており、西部大開発の優遇措置も受けられる。反面、インフラ、物流面は沿岸部に比べると未発達であり、日本人にとっての生活環境はやや不自由さも感じられるようであった。

あとがき~兵馬俑

 西安の有名な観光スポットに兵馬俑がある。兵馬俑は、始皇帝の陵墓を守るために制作 された兵士や軍馬の等身大の素焼き陶器であり、1974年に3人の農民によって発見された。その発掘現場をそのまま博物館としている。兵士の顔の表情がみな異なるなど凝った造りをしており、当時を想像するとその規模と数に圧倒される。万里の長城ともに中国で一見の価値ある歴史的遺産である。

博物館内の様子

一つ一つ違う表情の兵馬俑