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労働契約未締結の2倍給与(賠償金)について

 

1、事件経緯

 A氏はB社との間でA氏の月給1万元、営業職の担当、2014年1月1日から2015年12月31日までの2年間の労働契約を締結した。その契約期限満了後、A氏は、そのままB社に在職しているが、2017年6月にB社と齟齬が生じ、同月26日にB社より2017年7月31日をもって労働契約の解除を通知された。

2、仲 裁

 2017年8月31日に、A氏は労働仲裁を申し入れ、B社に月給1万元の基準で2016年2月1日から2017年12月31日まで労働契約未締結の2倍給与の差額、2017年1月1日から7月31日までの無期限契約の未締結の2倍給与差額と労働契約違法解約の賠償金を支払うよう求めた。

 仲裁審理中、B社はA氏との契約満了後、契約更新について協議したが、A氏は様々な理由で更新を拒んで、2016年4月15日に至ってようやく労働契約を補足締結したと経緯を説明した上、B社の証人の書面証明と2016年4月15日に締結した労働契約書を提出し、元の労働契約期限満了後更新できなかったことで、B社は労働関係を解除したと答弁した。

 A氏はB社の証人の真実性を認めず、その労働契約上のサインも偽造であると主張した。B社はそのサインの司法鑑定に応じない。

3、裁 決

 仲裁委員会は審理後B社に対して、「A氏に毎月1万元給与基準で2016年9月1日から2016年12月31日までの2倍給与差額と経済補償金2倍に相当する労働契約違法解除の賠償金を支払う。但し、A氏の無期限労働契約未締結の2倍給与差額の請求を支持しない。」と裁決した。

4、コメント

    • 1)2倍給与の起算期日は雇用開始日より、1ヶ月満了の翌日まで、締切日は無期限契約の締結或いは労働契約の補足締結の前日として、最長は11ヶ月間とする。従って、A氏の2倍給与の期限は2016年2月1日から2016年12月31日までとする。

      2)2倍給与の請求は労働争議仲裁の1年時効の規定が適用される。2017年8月31日にA氏は労働仲裁を申し入れ、その時効は2016年9月1月から2017年8月31日までとし、A氏が求める2016年2月1日から2016年8月31日までの2倍給与の支払は仲裁時効を過ぎたため、支持されないが、2016年9月1日から2016年12月31日までの2倍給与差額が支持される。

    • 3)労働契約の補足締結に関する2倍給与の適用について、各地の裁判実務上、見解が分かれている。深圳市中級裁判所は、使用者は法定期限内に労働者と書面労働契約を締結しておらず、たとえその後双方が契約を結んだとしても、労働者は使用者に締結日まで2倍給与を要求する場合、支持を与えるべきである。但し、双方は労働契約の締切日を法定期限内に遡り、署名し、または双方が約束した労働契約期間にすでに履行した事実労働関係の期間が含まれる場合、双方は最初から労働契約を締結したとすべきを、労働者は使用者に2倍給与の支払を要求することを支持しないと決めている。

       然し、上海市の関係部門は、労働契約を補足締結した行為がある場合、たとえ補足締結した労働契約の期限に契約未締結の期間が含まれても、使用者が2倍給与を支払う法的な免責を回避できないと考えている。

       

      以 上