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贈賄刑事案件取扱具体的法律応用若干問題に関する解釈

 2012年12月31日、最高人民法院、最高人民検察院は「贈賄刑事案件取扱具体的法律応用若干問題に関する解釈」(以下、「解釈」という)を公布し、2013年1月1日より実施されている。本稿ではその概要を述べます。

 

一、 背景

 2007年7月8日、最高裁、最高検は「収賄刑事案件取扱具体的法律応用若干問題に関する意見」を公布し、各種類の収賄刑事案件に対する反腐敗闘争を推し進めてきた。五年経過した今日でも、全国的に様々な収賄犯罪案件が次々と摘発される厳しい現状を踏まえ、これまで収賄犯罪のみを処罰したとしても、腐敗の根絶には程遠く、贈賄犯罪は厳罰に処することこそ最も重要なであると認識に至った最高人民法院、最高人民検察院は、国民が懇願する腐敗の阻止に注力した。

 

二、1万元以上、贈賄刑罰

1、解釈第一条は不正な利益の獲得を図り、国家公務員に贈賄し、金額一万元以上を超えた場合、刑法の規定に基づいて刑事責任を追及しなければならないと明確に決めている。解釈における不正な利益の獲得を図ることとは、贈賄者が獲得を図る利益が法律、法規、規約、政策規定に違反し、或いは国家公務員に対し法律、法規、規約、政策、業界規範の規定に違反することを要求し、自分の為に援助或いは便利な条件を提供させることである。また、公平、公正の原則に違反し、経済、組織人事管理等の活動において競争の優位性の獲得を図る場合、不正な利益の獲得を図ることとして刑事責任を追及すべきとしている。

 

2、解釈は贈賄で不正な利益を図り、下記のいずれかに該当する場合、刑法に決めた「情状が重大」と認定すべきとしている。

(1)贈賄の金額が20万元以下、100万元未満。

(2)贈賄の金額が10万元以上、20万元未満で、且つ下記いずれかに該当する場合

 ・3人以上に対する贈賄

 ・違法所得を用いた贈賄

 ・違法犯罪活動を実施するため、食品、薬品、安全生産、環境保護等の監督管理職責を負う国家公務員に対する贈賄で、国民生活に重大な危害を及ぼし、公衆の生命財産の安全を侵害

 ・行政法律執行機関、司法機関の国家公務員に対して贈賄し、行政法律執行及び司法公正に影響

(3)その他の情状が重大である事由

 

三、複数回贈賄、累計懲罰

 解釈では、複数回贈賄し、処罰されなかった場合、贈賄金額の累計に従い処罰する。また、贈賄者が不当な利益を図る行為によって犯罪を構成した場合、贈賄犯罪を実行した複数犯罪とともに処罰しなければならない。

 

四、自白情状、処罰軽減

 単位が贈賄したが、追訴前に、その組織或いは単位責任者が自ら単位の贈賄行為を自白した場合、刑法第390条第2項の規定に基づいて、単位及び関係人員に対して処罰軽減または処罰を免除することが出来る。

 

五、不当利益、没収処理

 贈賄犯罪で取得した不正な財産性利益は刑法の規定によって没収し、賠償或いは被害者への返還を命じる。贈賄犯罪で財産性利益以外の例えば経営資格、資質或いは職務昇進などその他の不正な利益を取得した場合、関係部門が関係規定によって処理する。

 

新主要法令

法  律  名  称

施行日

1

最高裁、最高検の「贈賄刑事案件取扱具体的法律応用若干問題に関する解釈」(『重要法規解説』をご参照下さい)

2013/01/01

2

国家工商行政管理総局、公安部、最高検の工商行政執法及び刑事司法接続協力工作字若干問題関する意見

2012/12/18

3

商務部、総関総署、国家質量監督検験検疫総局の2013年輸入許可証管理貨物目録

2012/12/27

4

全人大常務委員会のインターネット情報保護の強化に関する決定

2012/12/28

5

最高裁の修正後の民事訴訟法実施時案件結審法律適用若問題に関する規定

2013/01/01

6

税関総署の2012年第63号(輸入関税調整)

2013/01/01

7

国家質量監督検験検疫総局の「輸出入工業産品リスク預防警告及び迅速反応管理規定」に関する公告

2013/01/15

8

国務院の「自動車交通事故責任強制保険条例」の修正に関する決定

2013/03/01

9

全人大常務委員会の「中華人民共和国労働契約法」の修正に関する決定

 

2013/07/01

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。