中国式年越し

 中国で年越しと言えば、旧暦の大晦日から正月の15日までの間のことで、今年は1月22日~2月6日まででした。年越しの時期は、中国ならではの風物が見られるので、本稿はそのいくつかをご紹介します。

年会

 日本の「忘年会」は中国では「年会」と言い、忘年会と新年会を合わせて、1年間の慰労と翌年の期待も含めてご馳走を用意し、家族単位や会社単位で開催する。近年は単に御馳走を用意して飲食するだけの年会から、様々な催し物を企画する賑やかな年会が流行ってきている。
1月中旬、ある日系企業の「年会」に招待されたが、こちらの会社は、総経理(社長)以外は全員中国人で、若手従業員が年会の進行から抽選会まで全てを企画し、自分たちが心から楽しめる年会を作り上げていた。年会では各部門や企業内提案に対する年間表彰から抽選会などが催され、抽選会の賞品にはI padや携帯電話、液晶テレビ、冷蔵庫から洗濯機まで持ち帰りに悩んでしまうようなものまで準備されおり、大変な盛り上がりをみせていた。総経理の話では、こうしたイベントを社員自ら企画させることで、やる気の醸成や企業への愛着心が強まり、企業への定着率が高まるとのことで、例年、春節に帰省した社員の全員が春節明けに戻ってきている。この年会、昼から開始され、会場を変えながら夜中まで続くとのことである。

恒例?の乾杯一気飲み

種類豊かな景品

帰省ラッシュ

 春節時の中国人の帰省ラッシュは「民族大移動」と言われ、今年は1月23日の旧正月を故郷で過ごそうとする帰省ラッシュが1月8日に始まり19 日~21日がピークとなった。中国鉄道省は1月8日~2月16日の40日間の述べ31億5800万人が鉄道や飛行機などの交通機関を利用するという推計を 発表した。特に上海は中国各地からの出稼ぎ労働者が多いため、この時期の移動には特に注意を要する。ある日本人は、1月18日に上海から武漢への飛行機に 乗ろうと出発定刻2時間前に空港に到着したものの、帰省客で空港がごった返していたためチェックインが間に合わず乗り遅れたと言う。結局、長距離バスで 12時間かけて武漢まで移動したとのことだ。

春節前の駅ホームは大荷物を持った乗客が多い

 恋人レンタル

 春節の帰省時は家族や親戚と食事する機会が多いが、その際に結婚適齢期やこの時期を過ぎた独身男女は恋愛や結婚についてしつこく問われ、帰省時にお見 合いに行かせられたりする。結婚しないで子供が作れないのは「不孝」(「親孝行」しない)と見られてしまう。独身者にとって「年夜飯」(大晦日のご馳走) が「年夜煩」(大晦日の悩み)(中国語の発音が同じ)になってしまう。

 そうした独身男女を対象とした「恋人レンタルサービス」のような業態まで生まれている。「淘宝(タオバオ)網」で検索したところ、百ページ近く検索結 果が出てきた。1元(約12円)から数万元まで幅広い料金が提示されている。外見、(親類などとの)食事に出席、飲酒などサービス項目ごとで値段が変わ る。一時は凌げるかもしれないが、本当の恋人ではないことがばれる可能性や、目上の人に「お年玉」や貴重品を送られた場合にトラブルになる恐れがあるな ど、こうした行為にはリスクも伴うとの注意喚起がなされている。

龍年ベビー

 2012年は「龍年」であり、中国人にとって龍は「吉祥・古代皇帝の象徴」として縁起が良いとされている。今年は龍年で、「龍の伝承人」(中国人の祖 先は龍であり、龍年生まれはその伝承者という意味)という龍年ベビーブームの到来が見込まれている。地方の産婦人科病院は予約が殺到し、産後1ヶ月の専業 お手伝いさんやベビー用品の価格が月ごとに高騰している。ただ、ベビーブームは激しい子供の競争を生む。前回の龍年は2000年だったが、ミレニアムベ ビーの6年後は私立小学校の入学難が中国で話題となった。

春節旅行

 春節期間は帰省する人ばかりではなく、旅行を楽しむ人も増加してきている。春節の期間、上海を訪れた観光客は314.2万人に達したという。上海大劇 院、東方芸術センター、上海音楽庁などでは様々なカルチャーイベントが開催され、上海の各地域では地域の特長を生かした観光客誘致が行われた。

 一方、1月15日から28日の間に上海から中国国外へ行った観光客は64,334名に達したが、その8割はブランド品の時計やバッグの買い物が目的 だったとのことだ。外国メディアの報道によると、中国の「血?団」(衝動的に大量に買い物をする集団)は驚くべき購買力を世界に示し、「天使」と呼ばれた そうだ。店舗では中国語のできる店員を雇ったり、賞品や記念品に龍の要素を取り入れるなど工夫を凝らしている。こうした「血?団」の目的地は東南アジアを 上回り欧米が最大となっている。世界贅沢品協会の統計によると、春節期間中の中国人の消費は72億米ドルに達したそうである。

出所:東方網、MOPネット、携帯ニュース送信など