茨城県上海事務所 > 中国法律情報 > 国務院の「中国(上海)自由貿易試験区全体方案」について

国務院の「中国(上海)自由貿易試験区全体方案」について

 2013年9月18日、中国国務院が「中国(上海)自由貿易試験区全体方案」(以下、本方案という)を公布した。本稿ではその概要について以下の通り述べてみます。

 

一.背景

 中国はWTO加盟後第二次産業の改革は進展を遂げたが、第三次産業全体の改革は進んでいない。また米国を中心として多国間協議しているTPPに取り残された現況下、国際貿易及び投資において自国に不利な影響が及ぶことを危惧し、現況を脱却する為によりいっそう市場を開放し、国際経済自由化の流れに溶け込むことが、中国経済の継続発展を可能にし、ひいては将来のTPP加入及び中米投資協定の為に必要不可欠であると判断し、その国内体制及び理念の改革に応えるよう本方案に期待がかかっていると言っても過言ではない。

二.政府の行政機能の改革の加速、行政の透明度の向上

 国際的な投資規則に相応する行政管理体系作りを探索し、事前の審査認可から事中、事後の監督へ転換し、ワンストップ受理、総合審査批准と効率運用のサービス方式を確立し、異なる部門の協同管理メガ二ズムを実現する。

三、外商投資は認証制から届出制への変更

 ネガティブリスト(合計で18総類、89大類、190条管理措置)以外の分野について、内外一致の原則に従い、外商投資項目を認証制から届出制へ改め、外商投資企業の定款審査批准を取り消し、ネガティブリスト以外の外商投資一般項目について、最短4営業日で営業ライセンス、機構番号が発行される。

四、人民元クロスボーダーの先行試験の実施

 リスクコントロールが可能である前提下において、試験区内人民元資本項目為替、金融市場利率市場化、金融機構の資産の価額形成の市場化を行う。

五、試験区の要求と合致した試験区管理制度の構築

 企業が輸入船積書類をエビデンスとし、貨物を直接試験区内に搬入し、その後改めて輸入備案リストを用いて主管税関に申告手続きを行うことを許容する。試験区内に設立された企業が生産、加工して「第二線(試験区外)」を経由して内地で販売される貨物は規定に応じて関連する増値税、消費税を徴収する。

六、企業の5年内の所得税分納が可能

 試験区内に登記した企業または個人株主が非貨幣性資産による対外投資等の資本再編行為によって発生した資産価値増加部分については、5年を超えない期限内において所得税の分納を認める。現行政策の枠組みの下、試験区内生産企業と生産性サービス業が輸入を必要とする機械、設備等の貨物は免税とするが、生活性サービス業等の企業が輸入する貨物は法律、行政法規及び関連規定において明確に免税不可とされている貨物は除外する。

 

新主要法令

 

法  律  名  称

施行日

1

中華人民共和国国務院公布の「中国(上海)自由貿易試験区全体方案」について『重要法規解説』をご参照下さい)

2013/09/18

2

財政部の研究開発費用税前計上控除関係政策問題に関する通知现行有效外汇管理主要法规目录(截至2013年7月31日)

 

2013/01/01

3

国家税務総局の「営業税の増値税徴税クロスボーダー課税サービス増値税免税管理弁法(試行)」の公布に関する公告

 

2013/08/01

4

最高裁の「中華人民共和国企業破産法」適用に関する若干問題の規定

2013/09/16

5

国家工商行政局の「国家工商総局の中国(上海)自由貿易試験区建設の支持に関する若干意見」の配布に関する通知

2013/09/26

6

文化部の中国(上海)自由貿易試験区文化市場管理政策の実施に関する通知

2013/09/26

7

国家工商行政局の中国(上海)自由貿易試験区営業ライセンス試行の同意に関する批複

2013/09/26

8

最高裁の虚偽恐怖情報の捏造、故意伝播の刑事案件審理法律適用若干問題に関する解釈

2013/09/30

 

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。