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税収協定相互協商手続施行弁法について

 2013年9月24日、国家税務総局が「税収協定相互協商手続施行弁法」(以下、本弁法と略称)を公布し、11月1日より実施した。本稿ではその概要について以下の通り述べてみます。

一、背景

 2013年6月末、中国は既に99カ国と二重課税防止協定を正式に調印し、そのうち96カ国との協定は発効済みである。しかし、中国国内税収政策の調整及び国際経済交流の進化に伴い、税収協定の解釈及び適用に当たり、分岐或いは争議が増発、相互協定手続の発動によって争議を解決する案件数が上昇した。既存の「中国居民(国民)税務相互協商手続発動申請暫定弁法」(以下、旧弁法と略称)の不備、不明瞭さなどで案件処理の統一性、規範性及び効率性の確保に支障が生じている。旧弁法に代わる本弁法の実施は従来の問題の解消、税務機関の効率アップ、国の税収権益及び納税人の合法権利の保護に繋がると期待される。

二、適用範囲

 旧弁法は中国居民(国民)の相互協商手続発動申請の案件にのみ適用していたが、本弁法は締約相手側または中国税務機関の申し入れた相互協商手続案件まで範囲を拡大し、かつ、特別納税調整の相互協商案件の適用か否かを明確した。

三、中国居民(国民)の申請できる事項

 本弁法第九条は相互協商手続事項を以下の通りに類別した。

(一)居民身分の認定に対して異議がある場合

(二)恒久施設の判断、または恒久施設の利益帰属及び費用控除に異議がある場合

(三)各項所得、または財産の納税、免税、或いは税率適用に異議がある場合

(四)税収協定の非差別待遇(無差別待遇)条項を違反し、税収差別を既に形成したかまたは形成する恐れがある場合

(五)税収協定のその他の条項の理解及び適用に争議が生じ、自ら解決できない場合

(六)その他の既に異なる税収管轄権との間に二重課税を形成したか、または形成する恐れがある場合

四、税務機関による相互協商手続発動の条件

 本弁法第十四条は相互協商手続発動条件を以下の通りに類別した。

(一)申請人は本弁法第九条または第十条の規定により、相互協商手続を申請できる中国居民または中国国民

(二)申請した時期は税収協定に決める時限を超過していないこと

(三)協商を申し入れた事項は、締約相手側が既に税収協定を違反したか、または税収協定を違反する恐れがある行為であること

(四)申請人の提供した事実及び証拠は、締約相手側の行為が税収協定規定を違反したことを証明できる、または合理的に除外できないこと

(五)相互協商を申し入れた事項には本弁法第十八条に定める状況が存在しないこと

五、申請人の中国居民(国民)の権利義務

(一)相互協商を発動するか否かについては国内救済手段の存否を条件としない

(二)相互協商手続を既に発動した案件に対して申請人は税務機関に相互協商進展状況を把握する権利を有する

(三)相互協商過程中、申請人は相互協商の申請を撤回でき、または相互協商の結果を拒否することができる

六、締約相手側主管当局の相互協商請求

 以下のいずれかの状況に当たる場合、税務総局は締約相手側の相互協商請求を差し戻すことができる。

(一)相互協商を申し入れた事項が税務協定の適用範囲に属しない場合

(二)納税人の相互協商の申し入れが税収協定相互協商条項に定めた時限を超えた場合

(三)締約相手側主管当局の請求は明らかに事実または法律依拠が欠乏している場合

(四)締約相手側主管当局の提供した事実及び材料の不備、不明確さによって、税務機関は調査または確かめることができなくなる場合

七、執行双方主管当局の協力

 締約相手側主管当局の申し入れた相互協商事項について、双方主管当局の間で一致合意した場合、国家税務総局は公告の形式で相互協商の結果を公布し、その内、中国税務機関による税金還付またはその他の調整処理が必要な場合、関連税務機関は通知を受け取った日から3か月内に執行完了し、かつ状況を税務総局に報告しなければならない。

新主要法令

法  律  名  称

施行日

1

国家税務総局公布の「税収協定相互協商手続施行弁法」について『重要法規解説』をご参照下さい)

2013/11/01

2

財政部、国家税務総局の「総分機構納税人増値税計算納付暫定弁法」再配布に関する通知现行有效外汇管理主要法规目录(截至2013年7月31日)

2013/10/24

3

税関総署の区域通関業務改革の全面深化に関する公告

2013/10/29

4

国家税務総局の技術譲渡所得企業所得税減免関係問題に関する公告

2013/11/01

5

財政部、国家発展改革委員会の314項行政事業性費用徴収取消の公布に関する通知

2013/11/01

6

質検総局の「国境口岸衛生処理監督管理弁法」の公布に関する公告

2013/11/18

7

国家税務総局の輸出税金還付免除申請弁法に関する公告

2014/01/01

8

全国人民代表大会常務委員会の「中華人民共和国消費者権益保護法」の修正に関する決定

2014/03/15

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。