茨城県上海事務所 > 中国法律情報 > 未清算の会社の債務は株主が返済すべきか

未清算の会社の債務は株主が返済すべきか

一.事実経緯

 A有限会社「以下、A社という」は資本金2,000万元、X氏とY氏は1,020万元と980万元をそれぞれ出資し、Z氏は法定代表に就任した。

 A社は、B社に対して工事代金500万元を支払っておらず、その債務は判決により確定されたが、返済義務を履行しなかった。

 2006年11月、A社は工商行政管理局より企業営業許可証を取り消された。2011年8月、B社は裁判所にA社の強制清算を申し立てたが、A社の清算義務者及び会社帳簿、重要な文書が行方不明となっていたため、財産の状況を調査できず、強制清算の手続きは終止された。

二.裁判判決

 B社は、X氏、Y氏及びZ氏は清算義務の履行を怠けておりA社の債務返済について連帯責任を負うべきという理由で裁判所に起訴し、X氏、Y氏及びZ氏が500万元を連帯して返済するよう求めた。

 被告のX氏は、A社の営業許可証が取り消された際、会社は清算問題を意識していなかったこと、会社の主要な責任者はY氏の夫であり、X氏は会社の財産及び帳簿を管理していなかったことを理由に、清算に責任を負わない旨を答弁した。

 被告のY氏は裁判所の召喚に応じず無断で法定審理を欠席した。

 被告のZ氏は自身はA社の弁公室主任にすぎず、株主でもないので、清算に責任を負わない旨を答弁した。

 裁判所は、開廷審理中、「公司法」の規定に基づいて、有限責任会社の株主は工商行政管理局によって営業許可証を取り消された日から15日以内に清算委員会を組織し、清算を開始しなければならないとし、工商部門が発行した行政処罰決定書には株主の清算義務について明確に説明してあることから、X氏の法廷上の答弁及び抗弁理由を受け入れられないものとした。更に、X氏、Y氏はA社の株主としての履行義務を怠け、主要財産、帳簿、重要な書類などを紛失し、清算手続をできなくしたとし、A社の500万元の債務に対し連帯返済責任を認め、B社の当該訴訟請求を支持した。一方で、Z氏はA社の法定代表とは言え、同社の実質の統制権限を享有する如何なる証拠も示せないことに鑑み、B社のZ氏に対する返済責任の訴求を退けた。

三.コメント

1.現実に、多くの企業は解散事由が発生した際、株主の遵法意識の欠乏等により、会社の債権債務の清算を行わず、会社は長期間、未精算の状態に陥り、債権者利益が大きく損なわれている。

2.「会社法」の規定によれば、株主は期限内出資義務のほか、解散時迅速に清算委員会を組織する義務を負うものとする。

3.清算委員会を組織する期日については、会社の合併または分立に解散する必要な事由を除き、会社は解散事由が発生した日から15日以内に清算委員会を設置しなくてはならない。

4.清算義務者の範囲については、有限責任会社の株主全員及び実質統制者、株式会社の董事、マジョリティー株主及び実質統制者が含まれる。「実質統制者」とは会社の株主ではないが、出資関係、協議或いはその他の手配によって実質的に会社を支配できる人を指すものである。

5.会社の解散事由に当たる場合、株主は自ら積極的に清算義務を履行し、法によって会社の市場からの退去を保証しなくてはならない。さもなければ、本案のように債権者が法律に基づき自身の利益を守ろうとする場合、株主は自らの不作為の行為に対価を払わざるを得ない。

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。