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「労災者労働能力鑑定管理弁法」についての解説

 2014年2月20日、人力資源社会保障部、国家衛生計画生育委員会は「労災者労働能力鑑定管理弁法」(以下、「弁法」という)を公表し、2014年4月1日から施行する。本稿では、その概要を以下の通りに取り纏めてみます。

一.鑑定手続きの規範化と鑑定プロセスの細分化

 労働能力鑑定は労災保険の重要な手続きの一つであり、労働能力鑑定レベルは労災者による労災保険の待遇享受の重要な根拠である。

 「弁法」は全5章、33条に分けられ、労働能力鑑定機構の定義、鑑定手続き、管理監督、法律責任などを明確にする。

 労働能力鑑定機構とは、「弁法」に基づき、労働能力鑑定委員会の日常業務を担当する機構であり、その設置方式は各地の実情によって決定する。鑑定手続きについては、「弁法」は労働能力鑑定の届け出、届け出書類、書類審査、鑑定手配、現場鑑定、検査委託、結論送達、再鑑定、再審鑑定など各プロセスの手続き、条件及び期間を明確にしている。また、「弁法」の第三章、第四章は管理監督と法律責任を明らかにし、その目的は労働能力鑑定管理の監督と法律責任を強化し、労働能力鑑定業務において労働者の合法的権益を侵害し得る行為の防止と懲罰を強化することである。

二.公正公平の確保、便利なサービスの提供

1.労働能力鑑定の公平公正を確保するため、「弁法」では以下の四条項を規定している。

(1)関連制度の公開義務

 第6条:労働能力鑑定関連政策、業務制度及び業務プロセスを社会に公開しなければならない。

(2)専門家の選定方法の明確化

 第10条:労働能力鑑定委員会は、労災の程度に基づき、医療衛生専門家データバンクから労災者の負傷状況により専門家3名または5名を選出し、鑑定を行う。

(3)回避制度の確定

 第25条:労働能力鑑定委員会の構成メンバー、労働能力鑑定のスタッフ及び鑑定に参加する専門家は当事者と利害関係がある場合、回避しなければならない。

(4)違法機構と違法人員に対する処罰措置の明確化

2.「弁法」に基づき、業務担当者は補正材料と鑑定結論付けの期限を申請人に通知しなければならない。

(1)申請人の提供資料が不備な場合、5営業日以内に補充すべき全ての材料を書面にて申告人に通知しなければならない。

(2)申告人の提供資料が完備している場合、労働能力鑑定委員会は労働能力鑑定申請を受け取った後鑑定を速やかに行い、且つ60日以内に労働能力鑑定の結論を出さなければならない。

(3)負傷状況が複雑で、医療衛生専門に係わる部分が多い場合、労働能力鑑定結論付けの期間は30日間延長することができる。

(4)外出不自由な労災者に対しては、労働能力鑑定委員会が専門家を労災者の家に派遣し、労働能力鑑定を行うことができる。

(5)労働能力鑑定委員会は労働能力鑑定結果が出た日から20日以内に労働者及びその雇用者に鑑定結果を送達し、且つ社会保険担当機構に送付しなければならない。

三.労災患者の労働能力鑑定

1.労災者は負傷後、直ちに申請しなければならない。労災者は、治療後、病状が比較的安定し、体の障害が労働能力に影響を及ぼした場合、又は停職給与支給期間が満了した場合、労災者又は雇用者は管轄の労働能力鑑定委員会に速やかに労働能力鑑定を申請しなければならない。

2.労災者は、労働能力鑑定部門の労災認定決定書の原本と写し、有効な診断証明、医療機構カルテ管理関連規定に基づく検査報告の写しなど完備された病歴資料、労災者の身分証明書又は社会保障カード、あるいはその他の有効な身分証明の原本と写し、労働能力委員会が要求するその他の資料を提供しなければならない。

3.労災者は現場鑑定に参加しなければならない。労災者が正当な理由なく現場鑑定に参加しなかった場合、あるいは労働能力鑑定委員会が手配する検査や診断を拒絶したりした場合には、当該鑑定は終止する。

四.新主要法令

法  律  名  称

施行日

1

人力資源と社会保障部、国家衛生計画生育委員会「労災者労働能力鑑定管理弁法」『重要法規解説』をご参照下さい)

2014/04/01

2

国家郵政局の「送達不能差戻し不可速達便管理規定」公布に関する通知

2014/03/10

3

税関総署の「中華人民共和国税関加工貿易貨物監管弁法」の執行関連問題に関する公告

2014/03/24

4

税関総署の「中華人民共和国税関輸出入貨物税関申告書修正及び撤回管理弁法」の執行関連問題に関する公告

2014/03/27

5

税関総署の「中華人民共和国税関輸入貨物直接差戻し管理弁法」の執行関連問題に関する公告

2014/03/27

税関総署公告2014年第22号(両岸税関電子情報交換システムオンライン運行及び《海峡両岸経済協力枠組協定》項目下貨物税関申告書記入規範関連事項に関する公告)

2014/03/27

国家税務総局の増値税領収書受取及び使用手順関連問題に関する公告

2014/05/01

国務院令の医療機器監督管理条例

2014/06/01

税関総署の「中華人民共和国行政許可法」弁法の実施

2014/07/01

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。