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「国家税務総局の税収サービス及び管理の創新に関する意見」の解説

 2014年7月7日、国家税務総局は、登録資本登記制度改革後の税収管理制度を一層改善するため、「国家税務総局の税務サービス及び管理の創新に関する意見」(以下、「意見」という)を公布した。「意見」の具体的な内容について以下の通り解説します。

一.背景

 登録資本登記制度の改革は、中国政府が改革を深化させる重要な措置であり、工商登記を前提とする税務登記制度及び税務登記をベースにした税収徴収に大きな影響を与えている。

1.税務登記への影響について

 登録資本登記制度の改革に伴い、工商行政管理部門が登録資本、住所及び営業場所などの情報を審査しないようになるため、営業許可書の発行日を税務登記取扱の開始日とするなど、工商登記情報を頼りとした、従来の税務部門の管理方式に影響が生じる。

2.発票(※1)管理への影響について

 登録資本登記制度の改革後、発票不正取得のリスクが大きくなる。詐欺手段(例えば、偽造営業許可書、偽造身分証明書などの提供)により税務登記証を偽造、不正取得し、発票を不正取得する状況は増える傾向にある。登録資本制度を実収資本制度から引受資本制度に変更したため、税務機関による発票発行数量に重要な根拠を失い、発票の不正取得の問題が生じやすい。工商登記改革により住所(経営場所)への登記審査が緩和され、住所と経営場所との不一致が認められ、増値税一般納税者の認定の難易度が高くなる。

(※1)発票

 中国では、発票(インボイス)とは、企業や個人が商品を販売·購入、サービスを提供·受ける及びその他の経済活動に従事する際に発行する、損金算入と納税計算の根拠となる収支の証拠を指す。日本語訳では「領収書」になり、この発票がないと、損金算入と税額控除が認められない。今回の「国家税務総局の税収サービス及び管理の創新に関する意見」に基づき、普通発票購入を初めて申請する場合は1ヶ月分の用量に限られることになる。普通発票を正しく使用し、且つ不法記録がない納税者に対して、税務局は3ヶ月分の発票用量を一括提供することができると規定されている。

 3.今後の税収管理への影響について

 税種区分について、国税と地方税の管轄及び今後の税収入確定が困難になる。一部の地域では、経営範囲を登記監督事項から届出事項に変更している。現行税法に基づき、納税者は税務登記を行った後、納税期間中に納税額が無くても納税申告を行わなければならない。工商登記改革後、事業主は営業許可書を取得しても関連部門による許可を得られず、或いは従事できる経営行為の種類が定まらないことが原因で、長期間経営を行えない状況が生じ、申告しなかったり、ゼロ申告をしたり、申告期限を過ぎる会社は多くなる。そのため、意見は、登録資本登記制度改革の要求に順応し、税収監督の強化を目指そうとしている。

 二.意見の注目点

1.税務登記の便利化の推進

(1)税務登記方式の創新

①国税機関、または地方税機関の何れの一方は納税人の申請を受理して統一処理する。

②複数部門は、連携して条件を整え、営業許可書、組織機構番号証、税務登記証等の複数の証書を統一発行する。更に、上記の「三証」を統合する多機能の証書を発行できるよう模索する。

③全段階にわたり電子化による登記を推進し、ネットを通じて申請、審査及び証書発行を可能にし、納税人が求めない場合、紙による税務登記証を発行しない。

(2)税務登記手続の簡素化

①納税者が税務登記を申請する場合、税務機関は申請者の状況に応じて、納税者が登録住所及び生産、経営場所等の住所証明資料及び資本金払込済検査報告書を提供する必要があるか否かを決定し、現場調査・確認を行わなくてもよいとする。すなわち、申請者の状況に応じて、書類提供義務や提供する書類の種類が異なる。

②税務機関は関係部門と連携し、取得した工商登記、組織機構番号などの情報を直接、納税人識別番号に付与し、署名確認を行い、納税人による情報の重複提供を省く。また、税務機関の窓口は納税人の交付した申請資料に形式審査のみを行う。

 2.今後の管理の精緻化の促進

(1)発票の配布及び監督の改善

①税務機関は納税者に明確な発票配布の手引を提供し、発票配布手続を簡素化する。通常、発票受領は原則として実地確認せずに、税務機関サービス窓口で即時に取り扱う。一般納税者が増値税専用発票を申請し、最高限度額が10万元を超えない場合、主管税務機関は現地審査を事前に実施する必要がないものとする。

②ネット発票の活用を行うと同時に、電子発票の推進を模索する。

 (2)納税申告の簡便化

①納税者が実際の資産経営状況に基づいて税務機関窓口か、郵送またはネット申告など申告方式を自由に選択できるよう確保する。

②小型零細企業、長期間休業中の企業に対して、税務機関は、法律法規に基づいて徴収期間の合併、申告期間の調整などの方式を取り入れることができる。

 3.税収リスク管理の推進の常態化

(1)重点を置く税源、非正常納税者のリスク管理を強化し、不申告・滞納リスクを予防する。

(2)「一住所で複数の営業許可証、一営業許可証で復数の住所」に当たる納税者を重点注意対象先として取扱い、その増値税専用証拠の架空発行、輸出税金還付の詐欺などのリスクを防止する。

 

法  律  名  称

施行日

1

国家税務総局の「国家税務総局の税収サービス及び管理の創新に関する意見」『重要法規解説』ご参照下さい

2014/07/07

2

国家税務総局の新版増値税領収書の使用関連問題に関する公告

2014/08/01

3

税関総署の国境を跨る貿易電子商務の貨物・物品の輸出入の監督事項に関する公告

2014/08/01

4

国家食品薬品監督管理総局の医療器械登録管理弁法

2014/10/01

5

国家税務総局の「重大税収違法案件情報公布弁法(試行)」の配布に関する公告

2014/10/01

国家税務総局の「納税信用管理弁法(試行)」の配布に関する公告

2014/10/01

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。