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従業員が社則違反処分に署名を拒んだ場合、どう対処すれば良いか

一.相談事項

 ある金融会社の人事担当から次の法律相談を受けた。出勤遅刻や早退、勤務中の株券売買、オンラインチャットなど社則に違反する言動が目立つ従業員がおり、会社側が当該社則違反の事実を確認するために確認書への署名や始末書の提出を命令するも、当該従業員はこれを拒否している。当該従業員を厳重な社則違反を理由に労働契約を解除する場合、従業員の署名がない書面警告は有効か否かというものである。

 二.見解

 社則違反の従業員をどのように処罰するかは労働関係管理上の難題の一つであり、特に厳重な社則違反者との労働契約を解約する場合は尚更である。しかし、従業員の社則違反の事実に確実な証拠を得ずに処罰すれば、労働仲裁の敗訴リスクに直結する可能性があるため、確実な証拠を得るために下記の二つの点に注意を払わなければならない。

1.会社側による一方的な解約に必要な条件

 「最高人民法院の労働紛争案件審理における法律適用の若干問題に関する解釈」の規定には、雇用者による開除、除名、辞退、労働契約解除、労働報酬減少等の決定により発生する労働紛争については、雇用者が挙証責任を負うと定めている。従って、一方的な解約については、雇用者は解約の合法性を裏付けるための挙証責任を負わなければならず、かつ下記の三つの条件に合致していなければならない。

(1)解約の法律根拠

 雇用者は従業員との労働契約を解除する場合、労働契約法に定める契約解除条件を満たさなければならず、勝手に不法な契約解除条件を労働契約に約定してはならない。

(2)解約の事実根拠

 雇用者は契約解約条件に合致する客観的な事実の存在を裏付ける証拠を提出しなければならない。例えば、会社側は厳重な社則違反を理由に労働契約を解除する場合、従業員に対し社則違反行為があったことを裏付ける証拠を提出しなければならない。

(3)解約の手続根拠

 「労働契約法」の規定には、雇用者は労働契約を一方的に解除する場合、事前にその理由を労働組合に通知すると定めている。雇用者は試用期間中の労働契約を解除する場合、その理由を労働者に説明する。経済的人員削減が必要な場合、雇用者は30日前までに労働組合または全従業員に対し状況を説明し、労働組合もしくは従業員の意見を聞き取り後、人員削減方案を労働行政部門に報告しなければならない。雇用者はこれらの手続きなくして労働契約を解除する場合、労働契約不法解除となる可能性があると考えられている。

2.社則違反事実を裏付ける証拠の固定化
(1)証拠固定化と告知手続き

 会社側は、関連規程違反行為を社則に定め、かつ民主的討議手順及び告知手続きの上採択したことがあるか否かが重要である。

 民主手続きによる証拠固定化については、会社側は社則や会議の議事録、従業員意見取り纏め等の方式で確認することができる。告知手続きについては、会社側は従業員の受取サイン、トレーニングの出席確認、筆記試験などの方式で証拠を固定化することができる。実際には、公告で告知手続きを行う企業は少なくないが、挙証の角度から見れば、企業にとっては必ずしも有利ではないと考えられている。

(2)規律違反行為の存在

 雇用者は社則違反行為の存在を証明するには従業員に始末書を提出させ、あるいは規程違反処理意見に署名させることができるが、自己に不利な事実を署名で確認しようとしない従業員が少なくないため、この場合において雇用者は下記の方式で証拠を固定化させることができる。

①会社側は規程違反事実を書面にて確認の上、部門上司の処理意見を得て従業員に送達することができる。従業員が署名を拒否した場合、労働組合等の第三者経由で従業員による署名拒否の事実を証明することができる。

②会社側は補助証拠をもって社則違反事実を確認することができる。会社側は電子メールを送信して社則違反事実及び処理意見を明確にする。また、条件を満たした場合、雇用者は録音録画を通じて証拠を集めることができる。

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。