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動産浮動抵当権はどう行使すべきか

一.事実経緯

 服装会社(以下、「A社」という)は、製品の売れ行きが好調で生産規模を拡大するため、2004年12月15日、生産ライン及び在庫の原材料、製品を担保とする抵当権設定契約を締結し、銀行(以下、「B行」という)から貸付期間6ヶ月、月利890元で100万元を借り入れることした。B行は在庫の原材料と製品の正常な回転使用を認めたが、原材料と製品の一定数量の常時在庫をA社に保証するよう求めた。B行は、A社と共同で地元の工商管理局に登記を行った後、A社に貸付金100万元を貸し付けた。

 3ヶ月後、B行はA社の経営悪化による在庫の原材料と製品の減少を発見し、直ちに行員を派遣し倉庫の差押えを行い、原材料と製品の出庫を止めた上で、A社に対し、貸付金を返済するか、或いは、目減りした担保相応の追加担保の提供を要求した。しかし、A社は貸付金の返済も、担保の提供もできないと回答した。

 そのため、B行は裁判所に提訴し、A社の生産ラインと在庫の原材料と製品に対する抵当権を優先的に実現するよう請求した。

二.判決

 裁判所の審理の際、B行は、A社が経営不振で貸付金返済ができない状況下、抵当権の実行により優先的な求償を求めた。一方、A社はB行との貸付金抵当契約は認めたが、供した抵当物が法律に抵触しているため、抵当条項は無効である旨を主張した。

 裁判官は、本案の争議に関して、「物権法」第181条に定められた、①動産浮動抵当権の設定は書面による協議を用いなければならないこと、②適用主体は企業、個体工商戸及び農業生産経営者を含むこと、③動産浮動抵当権の目的物は現在所有する及び将来的に取得できる生産設備、原材料、半製品と製品という動産に限られているという成立要件を有しており、その上、「物権法」第189条に基づき、抵当権設定者所在地の工商行政管理部門に抵当権の登記を行ったことに鑑み、浮動抵当権は有効的に設定されていると見做されるべきであるものとして、A社の主張を退け、B行によるA社の供した抵当物に対する優先的な求償権を支持するという判決を下した。

三.コメント

1.浮動抵当権の特性

(1)浮動抵当権は、既有または将来的に取得する財産を目的物とする担保物権制度として、担保の財産範囲を拡大する。抵当権者が抵当権を行使する前、浮動抵当権設定者は被抵当財産の処分権を有し、正常な経営及び融資の需要に対応できる。

(2)浮動抵当権設定者が自由に被抵当財産を処分する権利を有することは、抵当目的物が不安定性な状況にあり、抵当権者の利益も不安定な状況に置かれ、その利益の実現に不利になる。

2.浮動抵当権の実行

 浮動抵当権の実行方法は通常抵当権の実行方法と異なっている。浮動抵当権の実行には抵当権者は裁判所に申請する必要である。裁判所は受理審査を経て、浮動抵当権の実行決定を下し、抵当権設定者の総財産を差し押さえる公告を発布する。

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。