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分公司は対外的に契約を締結できるか

 「会社法」第14条によれば、会社は、分公司を設立する際に、工商登記機関に登記を申請し、営業許可証を受領するものとされている。分公司は企業法人資格を有さず、民事責任は会社が負うと定められているが、分公司は独立的な財産と法人資格を有さなくても、工商登記を行い営業許可証を受領さえすれば、「民事訴訟法」上のその他の組織として民事訴訟の当事者となることができる。一方、「民訴意見」第41条に基づき、会社が法に従い分公司を設立せず、又は法に従い分公司を設立しても営業許可証を受領しない場合、当該分公司を設立した会社を民事訴訟の当事者とする。

 そのため、分公司が対外的に直接当事者として民事訴訟活動に参加できるか否かについて、営業許可証を受領したか否かを要件とし、分公司は工商登記を行い営業許可証を受領さえすれば、その他の組織として対外的に営業活動を行うことができると公示され、当然民事訴訟法上の当事者として民事訴訟活動に参加できるようになっている。

 本稿では、工商登記を行い、営業許可証を受領した分公司が自らの名義で対外的に契約を締結できるか否か、当該契約が有効か否か、会社及び分公司の民事責任分担について述べます。

1.分公司は自らの名義で対外的に契約を締結できるか否か

 分公司は自らの名義で対外的に契約を締結することができると考えられている。分公司は工商登記を行い営業許可証を受領さえすれば、会社の支社として合法的経営権を有すると見做されている。合法的経営権とは、分公司が対外的に自らの名義で営業許可証記載の経営範囲内でビジネス活動を行うことができることを指す。そのため、分公司が自らの名義で対外的に契約を締結する際には、その法律上の合法的経営権に基づき、分公司は分公司の社印を押すだけで有効である。

2.分公司が自らの名義で対外的に締結した契約の効力について

 通常、分公司が自らの名義で対外的に締結した契約は、その経営範囲内に止まり、又はその経営範囲を超えても契約の内容が国の経営制限、フランチャイズ制限及び法律法規の禁止性規定に違反しない限り、合法的且つ有効であるとすべきである。また、分公司が経営範囲を超えて対外的に自らの名義で締結した契約については、関連法規に基づき、分公司による対外的な担保の提供は制限されている。「担保法」司法解釈第17条に基づき、会社の分公司は、会社の書面による授権を得ずに担保を提供した場合、当該担保契約は無効となる。会社の分公司が会社の書面による授権を得ていても、当該授権の範囲が不明確な場合、会社の分公司は担保契約に定める債務の全部に保証責任を負うものとする。

3.分公司が対外的に自らの名義で締結した契約に対する民事責任の分担

 上述した通り、分公司は対外的に自らの名義で契約を締結することができるが、当該契約に起因する法的責任は次の通りとなる。分公司は、自ら経営し、経営管理にかかわる財産を所有し、相応の民事責任を負うよう求められた場合、まずは分公司が経営管理する財産をもって賠償を行うべきであるが、分公司がその財産のすべてをもって債務の全部を返済できない場合、「最高人民法院の人民法院執行工作の若干問題に関する規定(試行)」第78条に基づき、裁判所は、会社を被執行者として債務を返済するよう求めるが、会社が直接経営管理する財産をもって債務の全部を返済できない場合、会社が設立した分公司の財産に対し執行するものと裁定を下すことができる。

4.分公司が会社の授権範囲を超え、契約を結んだ場合、会社は分公司がその授権範囲を超えたことを理由に返済責任を負わないと主張できるか。

 相手方が分公司が授権範囲を超えて契約を締結したことを知った又は知るべき場合を除き、分公司が対外的に締結した契約が会社の授権範囲を超えていたとしても、会社と分公司との間の約定に過ぎないので、相手方と分公司が締結した契約に対抗できない。契約が合法的且つ有効であれば、会社は相応の補充責任を負わなければならない。

 分公司が対外的に締結した契約に起因する、会社が負担すべき民事責任は補充責任であり、分公司が債務の全部を返済できない場合、会社は残りの債務に対して返済責任を負わなければならない。実務上、分公司及び会社は共同被告として、分公司に相応の法的責任を負う一方、会社に分公司が返済できない部分の補充責任を負うよう求められるのは一般的である。

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。