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重要法規解説~上海市人大の「上海市人口計画出産条例」について~

 上海市人大常務委員会は、2016年2月23日、「「上海市人口計画出産条例」の修正に関する決定」(以下、「本条例」という)を可決し、同年3月1日実施した。「本条例」は6章45条で構成され、概要は以下の通りである。

一.背景

 今年に入ってから、広東、湖北、天津、浙江、安徽、広西などで相次いで人口計画生育新条例が発表されているが、いわゆる「高齢化社会」の段階に突入している上海でも女性の出産率が低く、人口構造が問題になっている。「本条例」の実施によって、上海市の人口老齢化スピードに歯止めをかけ、今後毎年2~3万人の割合で新生児が増加していくと見込まれている。

二.所管部門

 上海市、区、県衛生計画生育行政管理部門は法定職責により、それぞれの管轄区域における人口計画出産業務に責任を負う。

三.出産の権利と義務

 「本条例」では夫婦一組の2人目出産を提唱する。下記の条件のいずれかに該当する夫婦は改めて子女を出産することができる。

(1)一方が婚前に子女を出産したことがなく、他方が婚前に1人目を出産したことがあり、且つ双方は結婚後共同で1人目を出産している

(2)双方合計で婚前に合計で2人以上の子女を出産し、且つ共同で子女を出産したことがない

(3)双方は婚前に子女を出産したことがなく、結婚後共同で2人を出産し、そのうち1人は区、県或いは市障害児童医学鑑定機構によって非遺伝性障害と診断され、正常に労働能力を有するまで成長できないと鑑定されている。

 但し、上海市民が外国人と結婚した場合、国家の関連規定に従う。

四.奨励

 「本条例」は従来適用された晩婚晩育休暇を廃止し、代わりに以下のような結婚休暇、優遇策を導入した。

(1)法定の結婚条件(男性22歳以上、女性20歳以上)を満たした公民は法定の結婚休暇3日のほか、結婚休暇7日を追加する。

(2)法律規定を満たし出産した夫婦は、女性は法定の出産休暇(産前15日、産後83日)のほか、出産休暇30日を享受でき、男性は配偶者出産の付添休暇10日を享受できる。

(3)すでに受給している一人っ子父母奨励金は子女の16歳満了時まで享受できる。

(4)法によって子女を出産した公民は上海市関連規定に基づいて子女の託児所、及び幼稚園の一部託児費及び管理費を請求できる。

五.罰則

 「本条例」に違反し、子女を出産した公民は、社会扶養費の徴収のほか、以下のように処理する。

(1)妊娠の入院費及び医薬費は自己負担し、出産保険待遇及び出産期間の給与待遇を享受できない。

(2)受給した一人子父母奨励金などを返却する。

六.最近の主要法令

法  律  名  称

施行日

上海市人大常務委員会の「上海市人口計画出産条例」『重要法規解説』をご参照下さい)

2016/01/01

財政部、商務部、税関総署の「税関輸入免税店管理暫行弁法」配布に関する通知

2016/02/18

中共中央弁公庁、国務院弁公庁の「外国人永住居留サービス管理の強化に関する意見」

2016/02/18

国務院の「サービス貿易創新発展テストの展開の同意に関する批復」

2016/02/22

最高裁の「海事裁判所の案件受理範囲に関する規定」

2016/03/01

最高裁の「海事裁判所の訴訟管轄問題に関する規定」

2016/03/01

最高裁の「「中華人民共和国物権法」の適用の若干問題に解釈」」

2016/03/01

国家質量監督検験検疫総局の「輸出入食料検験検疫監督管理弁法」

2016/07/01

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。