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所有権留保及び破産取戻権の実現について

 「契約法」第 134 条に基づき、当事者は売買契約において、買主が代金未払い、又はその他の義務を履行しない場合、目的物の所有権は売主に属する旨を、売買契約に定めることができる。破産状態において売主に取戻権があるか否か、これをどのように行使するかを検討してみましょう。

1、所有権留保における取戻権

 

所有権留保における取戻権とは、所有権留保の売買契約において、買主が違約することによって売主の合法的権益を損害する場合、売主は買主から目的物を取り戻すことができる権利を指す。取戻権の原因となるのは法律が規定する又は当事者が約束するものである。その法的効果は売買双方が依然として原契約の効力を受け、売主は取戻権を行使することによって契約を解除する目的ではなく、契約の目的を実現しようということである。

   破産法における取戻権とは、管財人が債務者の財産を接収管理した後、他人に属している財産に対して、当該財産の所有者は破産手続きを履行せず、直接に破産財産から取り戻すことができる権利を指す。「破産法」第 38 条には、人民法院が破産の申立を受理した後、債務者が債務者に属していない財産を占有しているとき、その財産の権利者は管財人の承認を得てこれを取り戻すことができる。

   上記破産取戻権の概念と性質から見れば、買主が破産に陥った場合、売主は所有権留保条項を援引して目的物を取り戻すのは「破産法」における取戻権の条件に合致している。

2、所有権留保における取戻権の行使ルート

   最高人民法院の「企業破産案件の審理における若干問題に関する規定」第 71 条第 1 項(七)に基づき、債務者が所有権留保の売買契約において所有権を取得しない財産は破産財産に属していない。

   所有権留保の存続期間中、買主が代金の全額を支払わないうちに破産と宣告された場合、所有権留保の売買の性質を見ると、その場合において売主が目的物の所有権を買主に移転せず、買主もその代金の全額支払い義務を履行していない。「破産法」第 18 条に基づき、人民法院が破産の申立を受理した後、管財人は、破産申し立て受理前に成立した、債務者と相手方の間で未だ履行されず完済されていない契約を解除又は継続履行することを決定する権利を持ち、合わせて相手方に通知する。

   管財人が契約の継続履行を決定した場合、相手方は履行しなければならない。ただし、相手方は管財人に担保の提供を請求することができ、管財人が担保を提供しない場合、契約は解除されたものとみなされる。

   これに基づき、以下の措置を取ることができる。

(1)管財人が売主に契約の継続履行を請求した場合、売主は目的物を取り戻すことができない。但し、その代金債権は破産宣告によって期限が到来していたものと見なされ、管財人は取戻権を抗弁するため一括にて残額を支払わなければならない。管財人は残額を支払うことによって売買目的物の所有権を取得する。管財人がこれを支払われず、且つ担保を提供しない場合、契約は解除されたものと見なされ、売主はその取戻権を行使することができる。

(2)管財人が契約の解除を決定した場合、売主は目的物を取り戻すことができ、破産人が既に支払った代金を返還し、破産人に使用代償を支払い且つそれによってもたらされた損害を賠償するよう要求でき(相殺権を行使できる)、同時に、破産人に違約責任を負担するよう要求することもできる。

(3)管財人が契約を履行せず且つ解除しない場合、売主は依然として売買の目的物の所有権を有し、破産手続きにおいて取戻権を主張することができる。売主が売買契約に基づく目的物の所有権を留保するのは売主の権利への担保であり、買主が破産状態に陥った場合は、売主は目的物の取戻権を有している。故に、売主は目的物を取り戻すことができ、且つそれによってもたらされた損失については賠償を請求することができ、当該損害賠償請求権は破産債権に属している。

 所有権留保の存続期間において売主が破産になった場合、売主は売買契約に基づく所有権留保をもって目的物を取り戻す権利を持っている。買主が代金を全額支払うことによって目的物の所有権を取得した場合、売主は取戻権を行使してはならない。売買目的物が売主の破産財産ではなく、買主は代金を支払うことによって条件に該当した場合はその所有権を取得する。買主は契約に基づく代金を支払うことによって契約義務を履行する。故に、管財人は目的物の取戻を主張することができない。

3、目的物が処分された後の取戻権

 所有権留保の動産目的物は買主の処分により第三者に占有された場合、売買双方及び第三者の利益均衡を保つため、売主が取戻権を行使することによってその目的物の価値又は双方が約束した価値を超える利益を取得させてはならず、売主の利益が買主の処分によって損害をもたらされてはならないため、善意取得制度を適用することができる。

 所有権留保の目的物が買主の勝手な処分によって第三者に占有された場合、売主が取戻権を行使できるか否かを決めるのは所有権留保登記の有無である。

 所有権留保が既に登記されていた場合、売主は遡って目的物を取り戻すことができ、売主が破産状態に陥った場合、売主は破産手続きを履行せず、第三者に対し直接取戻権を行使することができる。破産人が当該行為によって債権者に損失を与えた場合、債権者は管財人に債権届出をすることができる。

 所有権留保が登記されず、且つ第三者が善意取得した場合、売主は第三者の善意取得に対して目的物を取り戻してはならない。但し、物の担保の代位性論理に基づき、売主は買主の処分による収益又は買主の第三者に対する代金債権を取得することができる。買主が破産状態に陥った場合、売主は買主の目的物の代金及び賠償損失金額に限って管財人に債権届け出をすることができる

以 上

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。