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「特別納税調査調整及び相互協議手続きに関する管理弁法」についての解説

 国家税務総局は、2017年3月17日付で、「特別納税調査調整及び相互協議手続きに関する管理弁法」(以下、弁法という」を公布し、2017年5月1日より施行することを決めた。本稿では62条で構成された「弁法」の概要を以下のとおり取りまとめる。

1.背 景

 国家税務総局は2009年に発令した「特別納税調整実施弁法(試行)」に関して大きく変わった国内経済環境に対応できるよう、G20の提唱した「利益は経済活動発生地と価値創造地で徴収する」との総原則に沿って、国際税収規則を参考に、特別納税調査調整及び手続きプロセスを新たに取り入れ、改定した「弁法」の公布、実施を決めた。

2.主な内容

1.企業は自ら調整し、税金を補足納付した後、納税の不足、または関連移転価格と方法を税務機関が確認した場合、税務機関は、特別納税調査調整を行うことができる。

2.「弁法」に決められた特別納税調査の手続きは企業に対する移転価格、コストシェアリング契約、被支配外国企業、過小資本、一般租税回避などにかかる特別納税調査に適用される。

3.税務機関は、非居住企業に対して特別納税の調査、かつ立案を実施し、また国内関連者あるいは調査と関連する国内企業に「税務検査通知書」の送達を委託することができる。

4.「弁法」第14条により、被調査企業は特別納税調査相関的資料を提供しなかったり、あるいは虚偽、不完全な資料を提供したりした場合、税務機関は期限付き改正を命じ、期限を過ぎても改正しない場合、税務機関は税収徴収法及びその施行細則関連規定によって処理し、かつその納税所得額を確定する。

5.「弁法」は税務機関が行う移転価格算定方法について被調査企業に該当する方法として原価法、市場法及び収益などの資産評価方法のほか、一般利益分割法を挙げている。

6.「弁法」は税務機関が特別に注意を払う下記の幾つかの租税回避行為を強調した。

(1)海外関連者のために、来料加工貿易(材料無償支給)あるいは進料加工貿易(材料有償支給)など単一の生産業務、または販売、契約型R&D業務に従事する企業は、判断を間違い、稼働率の低下、販売不振、開発の失敗などの原因で関連者が受けるべきリスクと損失を負担すること

(2)企業とその関連者間の隠匿取引が、直接的あるいは間接的に国家税収を減らすこと

(3)企業とその関連者間の取引の相殺が、直接的あるいは間接的に国家税収を減らすこと

7.海外関連者のために、来料加工貿易(材料無償支給)あるいは進料加工貿易(材料有償支給)など単一の生産業務、または販売、契約型R&D業務に従事する企業は、原則として合理的な利益水準を維持すべきだと明らかにし、損失が発生すれば、主管税務機関の当該企業のへの重点審査用としてその損失計上年度のローカル文章を準備する必要がある。

8.「弁法」は過去実施してきた5年間の追跡管理期間を取り消したが、税務機関が関連審査、同期データ管理と利益水準の監視などの手段を通じて、企業の関連業務往来表の申告要求を通して、企業に対して特別納税調整監視を実施し、移転価格税制の調査を受けた企業に対してその監視管理期間に限らないものとすると強調した。

9.「弁法」は以下の何れの状況にあり、自主的に取引きする原則に合致しない場合、税務機関は税前控除される金額全額に対して特別納税の調整を実施することができる。

(1)企業はその関連者との間で経済的利益をもたらさない無形資産使用権を譲渡または譲受し、特許権使用料を受取り、または支払うこと

(2)企業は無形資産の所有権を有するだけで、その無形資産の価値に何も貢献していない関連者に特許権使用料を支払うこと

(3)企業はその関連者に非受益性労務代価を支払うこと

(4)企業は執行機能、リスク負担を有せず、実質的な経営活動を行わない海外関連者に費用を支払うこと

10.特別納税調査調整プロセスを実施する中で、もし企業が税務機関の最終調整方案に異議を持つ場合には、企業は、「特別納税調整通知書」に沿って税金、利息、滞納金、あるいは関連する担保を納めた上で、異議申立及び行政訴訟が出来るとしており、または、中国が対外に署名した税収協定の関連規定に基づいて、特別納税調整相互協議の手続きの発動を申し入れることができる。

以 上

主要法令

法  律  名  称

施行日

1

 国家税務総局の「特別納税調査調整及び相互協議手続きに関する管理弁法」『重要法規解説』をご参照下さい)

 2017/05/01

2

 国家工商行政管理総局の「企業電子営業許可書業務の全面推進に関する意見」

 2017/04/11

3

 国家工商行政管理総局の「登記効率の向上、企業名称登記の管理改革の積極的な推進に関する意見」

 2017/04/19

4

 税関総署の「通関上の紙質の「中華人民共和国税関輸出入貨物免税証明」の提出免除に関する公告」

 2017/04/26

5

 国家税務総局の「営業税の増価税への変更にかかる徴収管理問題の更なる明確に関する公告」

 2017/05/01

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。