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違約金を受取った際の留意点について

 「契約法」の第114条は、当事者は一方が違約した場合、違約状況によって相手に一定額の違約金を支払うことを約束できると規定している。受け取った違約金に対して税金を納めるべきかどうか?領収書を発行すべきかどうか?下記の各事例のように異なる状況を区別して処理しなければならない。

 

事例1

 甲は乙と売買契約を締結し、甲が乙から特殊鋼材を購入することを約束した。その後、甲は経営戦略を調整したため、上述の特殊鋼材の需要が無くなり、契約を約束通りに履行できなかった。甲乙双方は協議を経て、甲が乙に違約金として5万元を支払った。

問題:乙はその違約金を支払われた甲に対して領収書を発行し、納税する必要があるかどうか

答え:契約を履行されていない際、違約側から違約金を受け取った場合には、領収書管理弁法に規定された商品販売、役務提供などの経営行為が発生していないため、領収書を発行してはならない。領収書管理弁法第19条は、商品の販売、役務の提供及びその他の経営活動に従事する企業と個人は、対外的に経営業務を行ったことによって、代金を受け取り、受取側は支払側に領収書を発行しなければならないと規定している。一方、領収書管理弁法実施細則第26条は、経営業務が発生していない場合には、領収書を一律発行してはならず、同時に、商品の販売、労務または役務の提供などにかかる増値税課税行為が発生していないため、増値税を納付する必要がないと決められている。類似したこととしては、契約の不履行によって、すでに受取った手付金を没収されたり、倍返したりして、没収された或は倍返しを受けた一方は経営行為が発生していないため、領収書の発行と、増値税の納付を行う必要が無い。手付金を没収された、または倍返した一方は、相手から領収書を取得できないため、調印した契約書、支払証憑または判決書などのその他有効な法律文書を証憑として企業所得税の税前控除ができる。

 

事例2

 甲乙双方は購買契約を締結し、甲が乙からグリーンピースを購入することを取決めた。乙は約束通りにグリーンピースを供給したが、甲は契約によって速やかに貨物代金を支払わず、1ヶ月以上遅れた後、代金を支払ったため、契約により、甲は乙に違約金として10万元を支払った。

問題:乙は甲より違約金を支払われ、領収書を発行、増値税を納付する必要があるかどうか

答え:甲より支払われた10万元の違約金が代金外費用に属し、乙は違約金を売上高に合わせて増値税を計算し、同時に甲に領収書を発行しなければならない。注意すべきことは、違約金を計算し増値税を納める時、グリーンピースの税率11%を適用し、そして税抜きの金額に換算して、売上の増値税額は0.99万元[10÷(1+11%)×11%]とする。

 契約がすでに履行されており、購入側は代金の延べ払いなどの原因で、契約に従って販売側に一定の金額を違約金として支払う。この場合の違約金は、増値税暫定条例と『営業税改徴増値税試行実施弁法』に決められている価格外費用に属する。増値税暫定条例の実施細則第12条に決められる価格外費用には、購買側から徴収した価格外の違約金と賠償金などが含まれる。上記の規定により、販売側が購入側から受け取った違約金は価格外費用に属し、売上高に合わせて増値税を計算し、且つ領収書を発行しなければならない。

 

事例3

 甲は乙と契約を結び、乙が甲のために工場建物1棟を建設すると取決める。工事中に安全要求の未達成と建てられた建物の品質に瑕疵があるため、契約の約定に従い、乙は甲に違約金として50万元を支払う。

問題:契約は履行されて、支払われた違約金が価格外の費用に属し、領収書を発行すべきか

答え:一見して、契約は履行され、支払われた違約金が価格外費用に属し、領収書を発行しなければならないが、実際にそうでもない。領収書を発行するのかを判断するには、誰が支払った違約金なのかを確認する必要がある。建築役務は乙が提供するわけで、乙が甲に上記の違約金を支払う。通常、甲は支払側とするが、上記の場合、甲は乙から違約金を受取る。領収書管理弁法実施細則では、経営業務が発生していない場合、領収書を一律発行してはならないと決められている。甲は商品の販売、役務の提供などの経営業務を行っていないため、領収書を発行し、増値税を納付する必要がない。勿論、甲は、乙に支払う工事代金から上記の違約金を差し引くことができ、乙に支払わせるとは限らず、税務処理に影響されない。

 

重要法規解説

 

「安全生産行政執法と刑事司法との連結業務弁法」について

 

 2019年4月16日、応急管理部、公安部、最高裁、最高検は連名で「安全生産行政法律執行と刑事司法との連携業務弁法」(以下、「弁法」という)を公布し、同日施行することを決めた。「弁法」は総則、日常執法中の案件移送と法律監督、事故調査中の案件移送と法律監督、証拠の収集と使用、協力メカニズム、付則を含め、全6章、33条から構成される。本稿は「弁法」の概要を以下の通りに取り纏めます。

 

1、目的

 「弁法」の実施は安全生産行政の執法と刑事司法との連携業務メカニズムを確立し、健全化することによって、安全生産違法行為を処罰し、民衆の生命財産の安全と社会の安定を保障するためである。

 

2、適用事件

 「弁法」は応急管理部門、公安機関、裁判所、検察院が取り扱う生産経営部門及び関係者の関わる安全生産犯罪事件に適用される。

 「弁法」が明確した安全生産犯罪に抵触する事件には重大な責任事故事件、違法冒険作業強制命令事件、重大な労働安全事件、危険物事故事件、消防責任事故、火災事件、安全事故不報告、嘘つき事件、不法な採掘、爆発物の不法製造、売買、貯蔵、不法経営、国家機関の公文書、証明書、印鑑などを偽造、変造、売買など、安全生産に関わるその他の犯罪事件に分類される。

 

3、法律監督

 「弁法」は日常の執法、事故調査中の事件の移送と法律監督についてそれぞれ規定している。公安機関は、「弁法」に基づき、立案する、または立案しないとの決定を下した場合、決定した日から3日間以内に書面で応急管理部門に通知し、同級検察院に転送しなければならない。応急管理部門は、立案しないことに対して異議がある場合、公安機関に再審査する、または検察院に監督を行うよう建議することができる。

 

主要法令

法  律  名  称 施行日
1 応急管理部、公安部、最高裁、最高検の「安全生産行政執法と刑事司法との連携業務弁法」(『重要法規解説』をご参照下さい) 2019/04/16
2

最高裁の「「中華人民共和国会社法」若干問題の適用に関する規定(五)」

2019/04/29

3

国務院の「2019年企業負担軽減業務実施方案の配布に関する通知」

2019/04/30

4

国家税務総局の「中国税収住民身分証明」の調整に関する関連事項に関する公告」

2019/05/01

5

最高裁の「高級裁判所と中級裁判所と管轄する第一審民事事件基準の調整に関する通知」

2019/05/01