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自発的に追納しても脱税と認定されるか?

一、経緯

 A社は、2010年から2014年まで自社物件を貸し出し、個人名義の銀行口座経由で一部賃借人の家賃を受け取り、受取書を発行したが、家賃収入を記帳せず、18883287.52元を申告しなかった。税務査察局は「税収徴収管理法」第63条第1項に基づいて、A社が脱税を構成したと認定した一方、A社が査察局の立案取調前、脱税行為を自認し、自主的に税額と滞納金を追納できたことに鑑み、軽減情状に該当し、A社に対して3761308.31元脱税額の0.8倍の課徴金3009046.65元を処した。A社はそれに不服し、裁判所に起訴した。

 

二、双方の言分

 A社は、査察局がA社への脱税行為の認定に対する行政処罰に適法する根拠が無く、証拠が不十分であると考え、自ら社内調査を行い、税金の過小申告を発見した状況で、自発的に税金及び滞納金を追納した行為は脱税したその結果を望み、または積極的にそれを追求する直接故意がないはずだけでなく、脱税したその結果を放任する間接故意もないことを証明できる。A社は査察前、自省し、税金を追納した行為は脱税を自制する行為に属し、違法行為に該当しないと主張した。

 査察局は、A社が脱税の主観的故意を有すると認める。A社は、一部賃貸契約において家賃の税金を納めなく、領収書を発行しないと明記しており、契約を利用し、納税義務を逃避することを企て、法によって領収書を発行しないことは賃貸関係が成立した時点にすでに収入を隠し、脱税の主観的故意が存在していることを証明する。A社の違法行為は脱税を構成し、「税金徴収管理法」に抵触し、行政処罰を与えるべき査察局の処罰が法的な根拠を有し、税金を追納したことは脱税行為の定性に影響しないと答弁した。

 

三、判決

 裁判所は、本件を審理、査察局のA社に対する脱税事実の認定、罰則の適法及びA社の追納について以下のように論じたうえ、A社の訴求を退けた。

1、A社の脱税について

 本案では、査察局が取調中入手したA社と9社との賃貸契約はA社が約束した方式で納税義務を移転し、故意に納税申告をしないことを証明できる。A社が期限通りに納税申告しないことは客観的に国家の税収を損ない、国家の税収秩序を破った。追納は申告年限に遅れ、客観的に過小納付の結果となった。A社の行為が「税金徴収管理法」第63条に決めた脱税の構成要件に該当したため、査察局がA社の脱税行為を認定した事実は明確であり、法律の適用が正しい。

2、追納の脱税認定に対する影響について

 A社はすでに追納したため、脱税の主観故意がないと推定すべきと強調した。本裁判所は主観的故意があるかないかは行為が発生した時に判断し、追納したからと言って、主観的故意がないことを逆に推論してはならない。納税者は査察局の査察前、自発的に補正申告と追納を行い、且つ税務機関は納税者の脱税の主観的故意があると証明する証拠が無い場合には、脱税として処理しない。但し、本案では、査察局の掌握した証拠はA社が2010年~2014年の間に自社の不動産を賃貸して、納税すべき収入を故意に隠蔽し、脱税の主観的故意を有することを証明でき、査察局が下したA社が脱税した定性が妥当である。

 

四、留意点

1、脱税行為(刑法上の脱税罪)は主観的故意であり、過失は脱税を構成しない。

2、「税金徴収管理法」であろうと、「刑法」であろうと、そこに列挙されている該当脱税行為は、主体が税金の不納または過少納付を積極的に追求する手段である。

 

重要法規解説

 

「民間納税を簡便化する為の10条新措置の実施に関する国家税務総局の通知」

 

 2019年7月23日、税務総局は今年上半期の減税政策の施行中、納税者の反映した問題に関して、「民間納税を簡便化する為の10条新措置の実施に関する通知」を公布し実施する。

 

一、税務総局は、税収優遇リスト式管理を推進し、不定期に税収優遇事項リストを公布し、その許可及び届出の特別情況を除き、納税者によって自ら判別、申告し、享受してもらう。

二、各省の税務機関は企業の自主的な基礎の上で、1種類から3種類までの輸出企業の中で輸出税金還付のペーパーレス化申告範囲を拡大する。

三、税務総局は、増値税領収書の検査プラットフォームの機能を最適化し、納税者は5年以内の増値税専用領収書、増値税普通領収書などの情報を調べることができる。各省の税務機関の領収書検査プラットフォームの登録画面を集合し、納税者は統一入り口を通じて各省の税務機関の領収書発行情報を調査できる。

四、税務総局は、増値税領収書の選択確認プラットフォームを最適化し、当期の控除すべき領収書情報のリマインダ機能を増加させ、当期の控除すべき領収書が控除期限を超えて納税者の損失をもたらすことを避ける。

五、税務総局は、「非重要書類不備でも受理」事項、適用対象及びその標準を明確にし、納税者の税金処理資料が不十分でも、主な申請資料が揃っており、実質審査に影響がない場合、「先に処理し、後で補充する」ことができる。

六、税務総局は、納税セルフサービス端末(装置)のサービス機能、アプリケーションインターフェース、運営管理などを統一、規範化し、納税者による自行処理事項を広げ、90%の経常税務事項をセルフサービス端末(装置)での処理へと徐々に実現する。

七、税務総局は、一部の地区を選択して証明事項告知承諾制を試行し、納税者の書面承諾は告知の条件、標準、要求に合致し、かつ不実承諾の法律責任を負う場合には関連証明資料の提供を免れられる。

八、税務総局は、増値税領収書管理の新しいシステムを最適化し、納税者の申告USBメモリが異常にロックされた場合、ネットでロック解除を申請でき、税務機関は規定の流れによって処理し、リスクを排除したら、速やかにロックを解除する。

九、税務総局は、都市土地使用税と不動産税納税申告表を統合し、各省税務機関は都市土地使用税と不動産税の納税期限を統一し、納税者の申告回数を減らす。

十、各省税務機関は、同級市場監督管理部門との提携を強化し、市場主体が市場監督管理部門に登録を行う際、法定代表者の実名情報を同時収集し、税務機関は部門間情報を共有する。

 

主要法令

法  律  名  称

施行日

1

国家税務総局の「民間納税を簡便化する為の10条新措置の実施に関する通知」(『重要法規解説』をご参照下さい)

2019/07/27

2

最高裁の「民間貸し借り案件審理法律適用若干問題に関する最高裁の規定」における借款利息規定を改定する建議に関する回復

2019/07/09

3

商務部の「商務信用連合懲戒対象リスト管理弁法」の配布に関する通知

2019/07/17

4

公安部の「製造容易爆発危険化学品治安管理弁法」

2019/08/10