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労働契約の終了に関する事前通知が必要か

一、経緯

 A氏は北京の某スポーツ用具会社(以下、B社という)の電気工の求人に応募して、双方は2016年7月31日から2018年7月30日までの2年間の労働契約を締結した。

 その契約の期限満了前に、B社が30日前に書面で通知せず契約を終了したため、賠償金を支払うべきだとA氏が問題視した。B社はA氏の言分を認めず、2018年7月16日に書面でA氏に契約終了を通知したと主張し、且つその談話記録を提示した。手書きの記録には、本人であるA氏は2018年7月16日午後5時10分ごろ、本部の某経理から、A氏と労働契約を更新せず、人事部の某担当者に補償事項について相談するよう連絡を受けたことが記載されており、落款はA氏、日付は2018年7月16日。

 A氏は談話記録に記載されている手書きの内容は本人の自筆したものであることを認めたが、B社の証明目的は認められず、この記録は書面通知ではないと主張し、30日前に労働契約の終了を通知しない通知代替金、つまり一ヶ月分の給料を支払うことを求めた。B社が通知金の支払に同意しないため、A氏は労働仲裁に仲裁を申し入れた。仲裁裁決に不服としたA氏は、また裁判所に提訴し、B社に通知代替金5940元を支払うように求めた。

 

二、一、二審の判決

 一審裁判所は、談話記録に記載されている事項に基づき、労働契約の期限満了に関する実際の通知及び事実の認知状況を考慮し、これにより会社が書面による契約の期限切れを通知する義務を完全に履行していないと認定できる。そのため、会社は労働契約終了の通知を遅延したことに賠償金1769元を支払うべきと判決した。判決後、A氏は談話記録の偽造を理由に上訴し、上訴審裁判所は控訴を却下し、原審を維持した。

 

三、問題

 労働契約の終了には事前の通知が必要か否かについて、各地の規定が異なっている。

1、労働契約の期限終了と法定終了について、「労働契約法」は使用者と労働者に事前通知の義務付けを決められていないが、一部の地方規定は使用者に事前通知の義務付けを決めている。例えば、2002年2月1日から実施された「北京市労働契約規定」の第40条には、「労働契約の期間満了前に使用者は30日前に労働契約を終了、または更新する意向を書面で労働者に通知し、協議を経て労働契約の終了または更新手続きをしなければならない」とある。さらに、第47条に、「使用者は本規定の第40条の規定に違反し、30日前に労働契約の終了を労働者に通知していない場合、労働者の先月の日割平均賃金を基準に、遅延した1日あたり労働者の1日分の賃金に相当する賠償金を支払う」と決められている。

2、2004年4月1日から実施された「遼寧省労働契約規定」の第27条の規定によると、「労働契約の期限満了前に、使用者は30日前に労働契約を終了または更新する意向を書面で労働者に通知し、協議を経て労働契約の終了または更新手続きを行わなければならない」とある。

3、2003年12月1日から施行された「江蘇省労働契約条例」(「元条例」という)の第37条第一項に「労働契約期間が満了する前に、使用者は30日前に労働契約を終了、または更新する意向を書面で労働者に通知し、期限が満了したら労働契約を終了、または更新手続きをしなければならない」としているが、2013年5月1日から施行された新しい「江蘇省労働契約条例」は、「元条例」の第37条の規定を削除された。

4、本案件の裁判所は「北京市労働契約規定」に基づき、会社は労働契約終了の通知を遅延した賠償金1769元を支払うべきと判決したが、上海市などの場合では、使用者が契約期限切れに伴い、事前通知の義務を履行する必要がないとしている。

5、一部の地方規定では、使用者に事前通知の義務を設けていても、使用者が事前通知をしていない場合には、労働契約も自然に終了する。この事前通知義務の設定は、労働者に1ヵ月間の再就職準備の時間を与えるためであり、労働契約終了の効力とは関係がない。また、労働契約の期限満了に関して、労使双方の特約がない限り、労働者は使用者に事前に通知する必要はない。

 

重要法規解説

 

「非居住納税者の租税協定待遇享受管理弁法」

 

 国家税務総局は、2015年8月27日に公布した「非居住納税者の租税協定待遇享受管理弁法」及びその2018年改訂版(以下、「元弁法」と略称する)を改定し、2019年10月31日に、「非居住納税者の租税協定待遇享受管理弁法(以下、「本弁法」)を公布し、非居住納税者の租税協定待遇享受資料の申告時の届出を保存、調査に備えることに変更し、2020年1月1日から施行する。「本弁法」の内容を以下の通り取りまとめしてみます。

 

一、背景

 税務総局は、2009年に審査許可を主とする租税協定待遇の享受手続きを全面的に導入、2015年、ビジネス环境を最適化する要求に基づいて、「元弁法」を公布し、非居住者に対して租税協定待遇享受の許認可を取り消し、税務機関への資料送付、その後続管理の受入を決めた。行政改革を深化するために、非居住納税者が協定待遇を享受する利便性を高め、税務総局は「元弁法」を改正し、「本弁法」の公布、実施によって手続きの簡素化を図る。

 

二、改正内容

1、非居住納税者が租税協定待遇を享受する資料を申告時の届出から保存調査に変更することは、非居住納税者が記入する書類を大幅に簡素化し、非居住納税者と徴収義務者の責任を明確にする。

2、改正後の非居住納税者が租税協定待遇を享受する手続きは、以下の通りである。            

 非居住納税者は、自己申告の場合、自ら租税協定待遇を享受する条件に適合し、且つ租税協定待遇を享受する必要があると判断し、申告時に「非居住納税者協定待遇情享受報報告表」を届出、本弁法第7条の規定に基づき関連資料をまとめて保存し、調査に備えなければならない。

 源泉徴収と指定源泉徴収の状況において、非居住納税者は、自ら租税協定の待遇を享受する条件に合致し、かつ租税協定の待遇を享受する必要があると判断した場合は、「非居住納税者協定待遇享受情報報告表書」を事実通りに記入し、自発的に源泉徴収義務者に提出し、本弁法第7条の規定に基づき関連資料を集めて保存し、調査に備えなければならない。

3、「元弁法」で規定された諸表は全部で10枚あり、非居住納税者に負担がかかりすぎるため、今回の大幅な改訂では1枚のレポートまでに収めて、非居住納税者は、名称、連絡先などの基本情報を記入し、声明を出せばよい。

4、非居住納税者が必要とする声明には、以下の内容が含まれる。

(1)税収居住者の身分は、締約相手方の法律法規と税収協定居住条項に基づいて、締約相手方の租税居住者とする。

(2)関連手配と取引の主な目的は租税協定の待遇を獲得するためではない。        

(3)自ら判断し、相応の法律責任を負う。

(4)規定によって関連資料をまとめて保存して調査に備え、税務機関の後続管理を受ける。

5、源泉徴収義務者は「非居住納税者協定待遇享受情報報告表」を受け取った後、非居住納税者は、情報の記入が完備しているかを確認し、国内税収法律規定と協定規定に従って源泉徴収し、「非居住納税者協定待遇享受情報報告表」を源泉徴収申告の附表として主管税務機関に提出する。

6、非居住納税者が自主的に「非居住納税者協定待遇享受情報報告表」を源泉徴収義務者に提出しない、または記入情報が完備していない場合、源泉徴収義務者が国内税収法律規定に従って源泉徴収する。

7、非居住納税者は、判断を間違って協定待遇の条件に合致せず、協定待遇を享受し、且つ税金を未納または過少納付した場合、相応の法律責任を負うべきである。            

 源泉徴収義務者は、本弁法第6条の規定に従って源泉徴収申告しない、または本弁法第13条の規定に従って関連資料を提供せず、協定待遇を享受する条件に合致しない非居住納税者が協定待遇を享受し、かつ税金を未納または過少納付した状況が発見された場合、源泉徴収義務者は相応の法律責任を負うべきである。

 

主要法令

法  律  名  称

施行日

1

国家税務総局の「非居住納税者の租税協定待遇享受管理弁法」(『重要法規解説』をご参照下さい)

2020/01/01

2

国家市場監督管理総局の「外貨口座簡素化に関する通知」

2019/10/23

3

最高裁、最高検、公安部などの「認罪認罰寛大制度の適用に関する指導意見」

2019/10/24

4

国務院の「外資利用業務の更なる完備に関する意見」

2019/10/30

5

国家市場監督管理総局の「商標申請登録行為を規範する若干規定」

2019/12/01

6

国務院の「中華人民共和国食品安全法実施条例」

2019/12/01

7

国務院の「ビジネス環境の最適化条例」

2020/01/01