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年末賞与の支給は誰が挙証すべきか

一、事案経緯

 2015年8月1日、A氏はIT会社(以下、B社という)に入社した。

 労使双方は2018年7月31日までの労働契約を締結する。2018年6月11日、A氏は個人の都合でB社に辞職願を提出した。同年6月26日に双方は労働契約を解除した。

 

二、仲裁

 その後、A氏は労働仲裁機構に仲裁を申立て、B社に2017年1月1日から2018年6月30日までの年末賞与54000元などを支払うよう要求し、仲裁より支持された。B社は仲裁裁決を不服とし、裁判所に提訴した。

 

三、判決

 法廷上、B社は、2017年度の年末賞与紛争について、双方が契約における年末賞与を約束していないため、会社が毎年支給する「年末賞与」は年末賞与と称するが、実質的に業績賞与に当たり、また、賞与の支給は雇用者の経営自主権として、会社の計画、部門計画、予算と業績及び当時の在職従業員人数によって確定されると主張した。

 裁判所は、審理の上、B社は自らの主張に対して裁判所に挙証していないほか、A氏が年末賞与を貰えない証拠を提示できないため、B氏が年末賞与を得る資格を有する。会社はすでに他者に賞与を支給した状況下、A氏にその賞与を支給する条件に合致しないことを証明できない場合、補足支給しなければならない。年末賞与の額については、同社の同僚の2018年6月の支給額を参照し、A氏の主張額が不当ではないと判断し、会社がA氏に年末賞与54000元を支払わなければならないと判決した。

 一審判決後、B社は不服し、上訴した。2019年11月8日、二審裁判所はB社の上訴を却下し、原判決を維持した。

 

四、コメント

1、年末賞与という法律用語が定められているが、年末賞与の支給方法、支給基準、支給期間については明確に規定していない。年末賞与は超過的労働報酬である以上、年末賞与の支給は雇用者が負担すべき強制義務ではなく、年末賞与の支給は「約束優先」の原則を貫き、年末賞与をどのように支給するべきか、自主権を企業に与えている。

2、年末賞与の支給は、雇用者が労働契約、または規則制度において、雇用者に有利な支給規則を規定することができ、事前に約定または規定に従って実施する。然し、事前の約束や規定がないと、紛争が発生した後、雇用者は一方的に主張することができなくなり、本案のように司法部門は事案状況に基づいて総合的に判断し、従業員の主張を支持する可能性がある。

3、実際に、退職社員と新入社員がその年度の年末賞与を獲得する権利があるかをめぐる争議が多い。労使双方が労働契約、または規則制度において、年内の入社と年前の退職が支給条件に合致しないことを明確に規定されている場合、その条件は法律規定に違反していない。年末賞与は激励の仕組みとして、法律で使用者が負担しなければならない義務ではないため、会社はその2種類の社員に年末賞与を支給しない権利がある。

4、現在の労働紛争司法実践によれば、審理過程は主に雇用者の規則制度に基づき、雇用者は年末賞与の具体的な支給条件、支給形態、給付金額などについて立証責任を負うべきであり、当然、その前提として双方の間に年末賞与の約束、または年末賞与の支給慣例が存在している。もし、雇用者が年末賞与の支給に関する約束があることを否定し、従業員もその他の証拠をもって、会社との間に年末賞与の約束があることを証明できず、またはその他の従業員は年末賞与を享受していることを立証できない場合、司法部門は通常従業員の年末賞与の訴求を支持しない。

 

重要法規解説

 

「納税信用の修復事項に関する国家税務総局の公告」について

 

 国家税務総局は2019年11月7日、「納税信用の修復事項に関する公告」(以下「公告」という)を発表した。6条及び添付書類3通で構成される「公告」は2020年1月1日より施行される。「公告」の主な内容について以下のように取りまとめしてみます。

 

一、納税信用の修復可能な情況

 限度修復の原則に基づき、「公告」第一条は19種類の情状が軽微または深刻な社会的影響を与えていない納税信用喪失行為及び相応の修復条件を明確にし、規定期限内に納税申告、税金納付、資料届出などを取り扱わない計15項目と直接に判定されるDレベル情況の4項目が含まれる。往年の納税信用評価状況から見ると、上記の状況は減点頻度が高く、納税者に関わる範囲が大きいため、「公告」の実施後、条件に合致する納税者は税務機関に納税信用の修復を申請することができる。

 

二、納税信用の修復条件と基準について

 納税信用の修復の実施は、規定期限内に信用喪失行為を是正することを前提とする。具体的な情況に対応する修復基準は「公告」に添付する「納税信用修復範囲と標準」を参照する。

1、納税者は法定期限内に納税申告、税金納付、資料届け出などの事項を取り扱わない事項が発生したが、事後に補足した場合、採点数は事後に補足した時間と信用喪失行為によって、税務機関に信用喪失記録に記入された時間との間隔によって確定し、30日以内、本年内、翌年内に是正した場合、それぞれ80%、40%、20%の減点数を挽回できる。規定期限内に未申告または申告した税金の未納などの事項に対して、税金額が1000元を超えず、かつ納税者は信用喪失行為が記録された30日間以内に速やかに補った場合、100%の減点数を返上される。

2、税務機関の処理結論に従って税金、滞納金と罰金を納付し、または全納しなかったが、犯罪を構成せず、納税信用レベルは直接にDレベルとして判定された納税者は、税務機関の処理結論を明確にした期限満了後60日間以内に税金、延滞金と罰金を全納、補足納付したうえ、初めて納税信用の修復を申請することができる。

3、非正常納税者は相応の法律義務を履行すべきであり、税務機関が法により非正常状態を解除した後、納税信用の修復を申請することができる。非正常納税者の信用喪失行為の修復は一納税年度内に一回しか申請できない。納税年度は西暦1月1日から12月31日までとする。

 

三、納税信用の修復に関する期限と手順

1、「公告」第一条第(一)項の条件に合致し、かつ信用喪失行為が納税信用評価に記入された場合、納税者はその記録に記入された翌年末までに主管税務機関に信用修復申請を提出することができる。信用喪失行為がまだ納税信用評価に記入されていない場合、納税者は申請する必要がなく、税務機関は、「納税信用修復範囲及び修復標準」に従って納税者の当該納税信用評価指標の点数を調整し、規定に従って後続の納税信用評価を行う。

2、「公告」第一条(二)(三)項の条件に適合する場合、納税者は、納税信用が直接にDレベルと判定された翌年末までに主管税務機関に申請することができる。税務機関は納税者の信用喪失行為を是正した状況に基づき、当該納税信用評価指標の状態を調整し、且つ納税者の納税信用度を再評価する。但し、Aレベルとして評価してはならない。

3、納税信用の修復後、納税信用はD級とされない納税者、その直接責任者が登記によってまたは経営を担当する他の納税者はD級として関わっている場合、主管税務機関に納税信用D級の関連解除を申請することができる。

4、納税信用の修復を申請する納税者は、主管税務機関に「納税信用修復申請書」を提出し、且つ信用喪失行為を是正した真実性を承諾する。主管税務機関は、納税信用修復申請を受理した日から15営業日以内に審査を完了し、納税者に信用修復結果をフィードバックする。

 

四、納税信用の修復結果について

 納税信用の修復が完了後、納税者は修復後の納税信用レベルによる相応の税収政策と管理サービス措置を適用し、以前適用された税収政策と管理サービス措置に遡って調整されない。税務機関は、納税者が信用修復の約束を履行せず、虚偽資料の提出によって納税信用修復を申請したことを発見した場合には、確認のうえ、完成した納税信用の修復を取り消し、且つ、納税信用年度評価において、一回に5点を減点する。

 

五、納税信用の再評価について

 納税信用の再評価は、納税者は信用評価結果に異議があり、一部の納税信用指標の減点または直接にレベルを判定したことについての間違い、または自身の原因に帰属せずもたらしたことと認め、自己の権益を守るために適用された行為である。納税信用修復は納税者が税務機関の年度評価結果に異議がないことを前提として、異議があれば、まず納税信用の再評価を行ってから納税信用の修復を申請すべきである。

 

主要法令

法  律  名  称

施行日

1

国家税務総局の「納税信用の修復事項に関する公告」(『重要法規解説』をご参照下さい)

2020/01/01

2

最高裁の「全国裁判所民商事審判工作会議紀要」の配布について

2019/11/08

3

国家税務総局の「小企業税務納税取扱簡便新措置の実施に関する通知」

2019/11/11

4

中共中央、国務院の「貿易高品質発展の推進に関する指導意見」

2019/11/19

5

中共中央弁公庁、国務院弁公庁の「知的財産権保護の強化に関する意見」の配布について

2019/11/24

6

国家市場監督管理総局の「市場監督管理提訴検挙処理暫定弁法」

2020/01/01

7

財政部、工業と情報化部、税関総署の「重大技術装備輸入税収政策関連目録の調整に関する通知」

2020/01/01

8

国家市場監督管理総局の「消費品リコール管理暫定規定」

2020/01/01

9

国家市場監督管理総局の「産品品質監督抜取調査管理暫定弁法」

2020/01/01

10

国家インターネット情報弁公室、文化と旅行部、国家ラジオテレビ総局の「ネットワーク音楽映像情報管理規定」の配布について

2020/01/01

11

国家税務総局の「異常増値税税金控除証憑管理等関連事項に関する公告

2020/02/01