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労働契約の満了日は法定休日のため延期されるか

一、事案経緯

 A氏は2011年9月21日にB社に入社し、双方は2011年9月21日から2014年9月20日までの3年間、A氏の月給は5200元とする労働契約を締結した。2014年9月初めにB社はA氏との労働契約の更新の可否を検討するために人事考課を行ったが、A氏の評価が思わしくなく、その部門経理との相談を経て、B社は労働契約の期限満了に伴い、A氏との労働契約を更新しないと決めた。9月19日は金曜日であったが、A氏は丁度、私用休暇を取って出勤しておらず、9月20日、21日は土曜日、日曜日でありA氏は休む。9月22日にA氏は正常にB社に出勤し、昼食後、B社の人事部は労働契約が9月20日で期限切れになったことに伴い、その更新をしないと決めた通知書をA氏に渡し、A氏に退社前離職の引継ぎ手続きを終えるよう求めたうえ、「労働契約法」の規定によって労働契約終了の経済補償金を支払うと伝えた。

 その後、A氏は労働人事仲裁委員会に仲裁を申立て、B社に労働契約を解除した経済補償金の支払いを要求した。

 

二、争議焦点

 A氏は、労働契約の満了日は9月20日であるが、会社より9月22日に労働契約の終了、契約の更新をしないと通知され、双方が約束した終了日を超えていた。また、A氏は9月22日に未だ会社には通常通りに出勤したので、会社の9月22日の通知は労働契約の解除に当たり、期限切れではないと見做すべきと考えた。

 B社は、中国の《民事訴訟法》における訴訟期間の計算に関して、「期間満了の最後日が祝日と休日である場合には、祝日と休日後の最初の平日を期間満了の期日とする」。法定の祝日と休日に当たるときは、期間はその翌日に順延となり、労働契約の満了日は休日のため、順延できる。従って、会社が労働関係の終了を決定したことは法定条件に合致しているとの認識であった。

 

三、裁決

 仲裁委員会は、審理後、B社は9月20日までに労働契約の更新をしないと決定したが、通知の義務を履行しておらず、A氏とも協議し、関連の手続きを取り扱わなかった。B社が9月22日に労働契約が期限満了、労働契約を更新しないことを通知した行為は労働関係を解除するという意思表示であると理解すべきである。

 

四、コメント

1、労働契約終了日はほぼ労働契約に明確に約束しているが、多くの雇用者は、労働契約の期限満了日に退社次第、双方の権利義務が終了すると考えている。このような考えは必ずしも正確ではない。元労働部の「労働契約制度の実施に関する若干問題に関する通知」第5条第2項は、「労働契約の終了時間は、労働契約期間の末日の24時を基準としなければならない。」と決められている。本案の双方の労働契約は9月20日に期限が切れることを明確に規定しており、当該期日は双方の労働契約義務を確定するための明確な期限であり、雇用者が通知義務を履行する時点であり、この時点を逃してしまうと、双方の権利義務は変化が生じる。

2、雇用者は、「民事訴訟法」における期限の計算を参照して、契約の満了日を勤務日に順延できると主張するのは根拠が乏しい。労働契約期間の末日の確定はやはり訴訟期間と違って、訴訟期間は期限的に強い規定であり、厳格な訴訟秩序を保障するためだけでなく、裁判所、特に当事者の訴訟行為の有効性にも関係しており、ひいては当事者の訴訟権利の喪失に繋がるかどうかにかかっている。労働契約における約束は、当事者の意思の内容に属し、法律上強制的な規定ではない。従って、労働契約期間の末日は労働契約の約定期限の最終日の24時を基準とし、法定祝日、休日により契約の終了日を順延することにならないものとする。

 

重要法規解説

 

「一部の地区での民事訴訟手続きの簡素化仕分改革の試行業務を展開するために最高裁に授権することに関する全人大常務委員会の決定」

 

 全人代常務委員会は2019年12月28日、「一部の地区での民事訴訟手続きの簡素化仕分改革の試行業務を展開するために最高裁に授権することに関する決定」(以下、「決定」という)を公布し、翌日より実施する。その内容を以下の通り取りまとめしてみます。

 

一、背景

 従来の司法確認手続きの適用範囲が狭く、小額訴訟手続の適用ハードルは高い。簡易訴訟適用案件の範囲が限定的、裁判員独任制の不合理、電子訴訟の関連手続き規定の不明確などで司法の業務効率アップを制約しているため、「決定」の公布、実施は訴訟制度とメカニズムの面から司法効果を高め、民事訴訟の司法環境の改善に繋がることが期待される。

 

二、試行内容

1、司法の確認手順を最適化する。特別招請調停制度を健全化し、起訴前の委任調停と司法確認手続との接続メカニズムを充実させる。司法確認手続の適用範囲を合理的に広げ、弁護士調停センターなどの特別招請調停組織、または行政機関、人民調停委員会が法により民事調停合意に達した場合、当事者は裁判所に司法確認を申請できる。司法確認事件の管轄規則を充実させ、レベル管轄と専門管轄基準に適合する場合、対応する中級裁判所と専門裁判所が受理する。

2、小額訴訟の手続きを改善する。小額訴訟手続の適用を強化し、小額訴訟事件の請求額基準を引き上げ、その審理方式と裁判文書を簡略化し、審理期限を短縮する。小額訴訟手続と簡易手順、普通手順の転換メカニズムを完備する。

3、簡易手順の規則を改善する。公告送達が必要な簡易民事事件については、簡易手続で審理できることを明確にし、「簡易手続審査期限規定」を完備する。

4、独任制の適用範囲を拡大する。末端裁判所での裁判官一名による普通手順の適用及び一部の民事事件の単独審理、中級裁判所と専門裁判所での裁判官一名による一部の簡易民事控訴事件の単独審理を試行し、独任制の具体的な状況と審理方式を明確にし、独任制と合議制の転換適用メカニズムを確立する。

5、電子訴訟規則を健全化する。訴訟参加者が裁判所情報化プラットフォームを通じて、オンラインで完成した訴訟行為の法的効力を明確にする。当事者がオンラインで訴訟することを選択した場合、訴訟資料と証拠資料を電子化して提出することができ、裁判所の審査を経て通過した後、紙の原本を提出しなくてもよい。当事者の同意を得て、簡易手続又は普通手続で審理される案件を適用し、オンライン映像方式で開廷することができる。電子送達の適用条件、適用範囲と発効基準を明確にし、受取人の同意を経て、電子方式で判決書、裁定書、調停書を送達することができる。

 

三、実施期間

 試行期間は2年とし、試行期間が満了後、実践で試行策を証明された場合、関連法律を改正し、さもなければ、関連法律規定の実施を回復する。

 

四、試行地域

 北京、上海市管轄内の中級裁判所、地裁;南京、蘇州、杭州、寧波、合肥、福州、厦門、済南、鄭州、洛陽、武漢、広州、深圳、成都、貴陽、昆明、西安、銀川市中級裁判所とその管轄内の地裁;北京、上海、広州知識産権裁判所;上海金融裁判所;北京、杭州、広州インターネット裁判所は試行先として選定される。

 

主要法令

法  律  名  称

施行日

1

全人大常務委員会の「一部の地区での民事訴訟手続きの簡素化仕分改革の試行業務を展開するために、最高裁に授権することに関する決定」(『重要法規解説』をご参照下さい)

2019/12/29

2

最高裁の「中華人民共和国外商投資法」適用の若干問題に関する解釈

2020/01/01

3

国務院関税税則委員会の「2020年輸入暫定税率など調整方案に関する通知」

2020/01/01

4

国家インターネット情報弁公室の「ネットワーク情報内容生態処理規定」

2020/03/01

5

最高裁の「民事訴訟証拠に関する若干規定」

2020/05/01