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株主の資本金の未納に董事、高管は連帯責任を負う

一、事件経緯

 斯曼特微顕示科技(深圳)有限公司(以下、A社という)は2005年1月11日に深センに設立された外資企業で、その株主はケイマン諸島に登録するSOUTH MOUNTAIN TECHNOLOGIES, LTD.(以下、B社という)であり、登録資本金は1600万米ドル、胡秋生など6名は先後にA社の董事を務めて、同時にB社の董事でもあった。2006年3月16日までにA社への出資金を完納すべきではあるが、2005年3月16日から同年11月3日までに数回払込後、残りの資本金500万米ドルは未納のままでした。

 

二、一審、二審判決

 2011年8月31日、一審裁判所は、B社を被執行者として追加し、500万米ドルの範囲でA社の債権者である捷普電子(蘇州)有限公司(以下、C社という)に対して弁済責任を負うとの民事裁定書を下した。強制執行後もB社はなお491万米ドルの出資金を払込しなかった。

 A社の株主であるB社は定款の約束通りに全額出資金を払込しなかったため、C社によって起訴、強制執行を申請された。その後、C社の申請を経て、裁判所はA社の破産清算申請を受理することを裁定した。

 A社は、裁判所に提訴し、その6名の董事は、『会社法』の第百四十七条に規定された勤勉義務を果たさず、株主であるB社が出資義務を全面的に履行していないことを知りながら、未納を催促しないことによって、A社の資本金不足を齎し、会社の債務返済能力を損ない、最終的にC社に破産を申し入れられてしまい、A社の被った損失に対して連帯賠償責任を負うと訴えた。

 一審裁判所は、胡秋生など6名の董事が株主の出資を追納する勤勉義務を消極的に履行しなかったことは株主が出資を未納した原因にならず、更にA社が破った損失額と必然的に関連していないと考え、A社の訴訟請求を退けた。

 A社は一審の判決を不服とし、上訴した。二審裁判所は、その控訴請求が成立しないと判断し、却下した。

 

三、再審判決

 A社は二審判決を不服とし、最高裁に再審を提起し、最高裁は、A社は債権者に破産清算を申請され、その株主が出資を未納した行為は実際にA社の利益を損ない、その董事の消極的な不作為は、実際の損害の持続を放任したままで、株主が未納した出資金はかかる会社の遭った損失であり、株主が出資金を未納した行為と董事が消極的な不作為とともに損害の発生、持続を致し、董事がかかる会社が破った損失との間に法律上の因果関係があり、A社の董事はかかる会社が株主の出資金の未完全な払込によって破った損失に対して、連帯賠償責任を負うべきであると判断し、一、二審の判決を取消し、胡秋生など6人の董事はA社に491万米ドルを連帯して賠償するべきだと判決した。

 

四、コメント

1、董事、高級管理職の勤勉義務は、株主に出資を催促することを含む。「会社法司法解釈三」によると、増資時に出資義務を履行しないかまたは完全に履行しない株主に勤勉義務を果たさず、出資金の満額な払込を促さなかった董事、高級管理者は相応の責任を果たした後、株主に対して償還を求めることができる。

 登録資本の「払込登記制」から「引受登記制」への変更後、最高裁は、類推適用の原理を適用して、会社設立時と増資時に、董事は、株主に対する同様な出資の補足を促す義務を負うべき、故に、勤勉義務を果たさない董事は株主の会社への出資不足に連帯責任を負わなければならないと考える。

 

2、会社法は董事の勤勉義務の具体的な状況を列挙していないが、董事は出資義務を未履行または全面的に履行していない株主に出資を催促する義務を負うことは董事の職能の位置付けと会社資本の重要な役割によって決められ、会社の正常な経営の保障上において不可欠である。

3、 株主が出資期限満了後に未納の状況がある場合、会社の董事は、会社定款と規則制度に従って、董事会を開催し、株主に出資金の払込を催促する決定を可決し、且つ、関連する書類を保存するよう董事としての義務を果たされることが望ましい。

 

重要法規解説

 

「ビジネス環境の最適化、市場主体への最善サービスに関する国務院弁公庁の実施意見」についての解説

 

 国務院弁公庁は2020年7月15日、「ビジネス環境の最適化、市場主体への最善サービスに関する実施意見」(以下、「意見」という)を配布、実施する。「意見」は5項目、20条から構成され、その主な内容は以下の通りである。 

 

一、背景

 近年、中国のビジネスの環境が徐々に改善されたが、コロナウイルスなどの影響を受けて、企業の直面している困難が際立ち、更に改革の方法を講じて、企業の生産経営における難点を解決するために「意見」の公布、施行によってビジネス環境の市場化、法治化の構築を図る必要がある。

 

二、「意見」の主なポイント

1、「意見」は六つの政策措置を提出した。

 投資建設の利便性を持続的に向上させること。投資プロジェクトの前期審査プロセスを最適化し、政府部門はプロジェクト施主の報告資料を統一的に受理・評価し、同時に審査し、統一的にフィードバックする。工事建設プロジェクトの全プロセスをオンラインで審査・承認することを加速する。「多規合一(複数の計画を一つの地域に融合させ、一つの市・県の計画、一つの青写真を実現する)」を推進し、測量の技術基準と規則を統一し、測量図の成果共有、相互承認を実現する。

 

2、企業の生産経営審査と条件をさらに簡素化すること。市場参入のハードルを引き下げ、教育、医療、スポーツなどの分野での不合理な参入条件を整理する。工業製品の生産と流通などの管理措置を簡素化し、年内に工業製品の生産許可証の管理権限を省レベルに下放する。小規模零細企業などの経営コストを低減し、地方での「一照多址(一つの営業許可証でその地域に複数営業住所に適用する)」改革を展開し、プラットフォーム企業のコミッション、バーコード支払手数料などの引き下げを奨励する。

 

3、対外貿易外資企業の経営環境を最適化すること。輸出入の通関効率を高め、「事前申告」を推進し、「二段階申告」通関モデルを最適化する。輸出入にかかる監督管理証書は、原則として「単一窓口」で一括受理する。外資貿易企業の投資経営制限をさらに減らし、輸出商品の国内販売への転換を支持し、国際認証を取得し、且つ認証基準が国内基準を下回らない製品に対して国内基準に符合する書面により、承諾後直接に市販を許可し、事後の監督管理を強化する。全国のすべての地方レベル及び都市に外国投資企業の登録を行う権限を与える。

 

4、就業・起業の敷居をさらに下げること。貨物運転手、獣医などの一部の業界の就業条件を最適化する。人材の流動と柔軟な就業を促進し、来年6月末までに職業等級情報のオンライン検証を実現する。新しい業態に対する包括的かつ慎重な監督管理を充実させ、インターネットの診療範囲をさらに緩和して、ナビゲーション電子地図作成の資格申請条件を低減させる。スマート・ネット自動車などの新業態アプリケーションシーンの応用需要を増やす。

 

5、企業にかかわるサービス品質と効率を向上させること。企業の設立と経営の便利性を推進し、小企業、零細企業、個人自営業の登録経営場所の制限を緩和する。納税サービスのレベルを向上させ、基本的には年内に主要な税金関連事項をオンラインで実施する。商標登録の効率をさらに高める。不動産担保融資サービスを最適化する。

 

6、ビジネス環境の最適化のための長期的かつ効果的なメカニズムを改善すること。実施効果に重点を置いた政策評価制度を整備する。常態化した政府・企業のコミュニケーション連絡メカニズムを確立し、ビジネス環境の苦情の受理と等級別処理の「一つのネットワーク」を加速させる。企業への優遇政策の「申請なき享受する」を推し進める。

 

主要法令

法  律  名  称

施行日

1

国務院弁公庁の「ビジネス環境の最適化、市場主体への最善サービスに関する実施意見」(『重要法規解説』をご参照下さい)

2020/07/15

2

税関総署の「加工貿易内販申告納税処理期限の調整に関する公告」

2020/07/01

3

工業と情報化部、国家発展と改革委員会、科学技術部などの「中小企業発展制度支持の健全化に関する若干意見」

2020/07/03