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虚偽陳述のペナルティ

一、事件経緯

 2012年、黄某(以下、原告という)は河南某ゼネコン有限公司(以下、被告という)と「協議書」を締結し、原告が被告の名義を借りて工事を受注することを取り決めた。2013年、原告は被告の名義で河南某不動産開発有限公司(以下、第三人という)と工事請負の「協議書」を締結し、被告がある住宅団地の工事を請け負うことを約束した。契約締結後、原告は実際に請負工事を施工し、2015年11月に竣工検収した。原告は第三者と当該の工事代金の清算中に、被告自身の債務の原因で、2015年7月に天津市第二中級裁判所によって裁定の執行を下され、被告が第三者に享有している当該の期限満了工事代金2千万元余りの債権を凍結、差し引かれた。これにより、被告、第三者は原告に対して、裁判所により差し引かれた工事代金を支払わなかった。

 

二、罰金の決定

 2019年、原告は被告と第三者が相応の工事代金と期限経過利息を共同で支払うよう金水区裁判所に提訴した。開廷前、被告は答弁書を提出し、被告と原告はかかる工事に対していかなる協力協議も達成しておらず、更に工事費の未払いが存在しておらず、原告は被告に工事の未払金の支払いを要求する権利がないと主張した。2020年3月31日、金水区裁判所は本案件を審理したが、被告は欠席した。

 

 法廷審理後、原告は2020年4月20日に被告より送付された「状況説明」を裁判所に提出した。その書類に、被告は、かかる工事の実際施工者が原告であり、かつ第三者の未払工事代金を原告に支払うべきと認めた。 

 

 金水区裁判所は、被告は原告が実際の施工者であるか、まだ工事代金の未払いがあるか否かに関する前後の陳述が矛盾しており、その虚偽陳述行為が訴訟秩序を妨害し、事件の事実認定に影響を与えたため、処罰すべきと認定し、2020年6月28日に被告に対して、罰金の決定書を送達し、5万元の罰金を課し、2020年7月15日までに納付するよう命じた。

 

三、コメント

1、司法実務上において、当事者の虚偽陳述には以下のようなものがある。

(1)客観的事実の存在を否定する。例えば、被告が原告の起訴事実を否認する。

(2)虚偽の意思を表示する。例えば、自己に有利な法律上の結果を得るよう原告、被告の一方または双方はいずれも虚偽の陳述を行う。

(3)目的のある訴訟詐欺。例えば、いずれかの訴訟当事者は証人と結託したり、双方の当事者が悪意に共謀したりして、手続きに合致する訴訟形式を通じて、裁判所に誤審をさせ、他人の利益を損ない、不法利益を図る。

 民事訴訟の私法的性質上において、当事者は民事紛争に対して自主的に解決する権利、そして訴訟の目的に対して自由な処分権を有し、虚偽の陳述は当事者の一方が相手に対抗するための方式になりがちである。

2、民事訴訟法第102条は偽造、証拠隠滅などの行為のみを規定しており、裁判所は情状の軽重に応じて罰金、拘留することができるが、虚偽陳述の行為に対して処罰措置を規定していないため、虚偽陳述はある程度司法の公正を害し、制裁を加えないと司法の権威を動揺させ、裁判所の公信力に影響を及ぼす。

3、本案のように原告に十分な証拠があるにもかかわらず、被告が依然として虚偽の陳述をした行為に対して裁判所は、民事訴訟法第102条を適用し、情状の軽重に応じて罰金を科すべきと考える。本判例は訴訟に関わる当事者にとっては決して他人のことではない。

 

重要法規解説

 

商務部の「外商投資企業クレーム業務弁法」

 

 2020年8月31日、商務部は「外商投資企業クレーム業務弁法」(以下、「クレーム弁法」という)を発表し、その「クレーム弁法」は総則、クレーム弁法の提出と受付、クレーム処理、クレーム管理制度と付則五章に分けられ、全部で33条で構成されており、今年10月1日から正式に実施される。その概要は以下の通りです。

 

一、背景

 2006年、商務部が発表した「外商投資企業クレーム業務暫定弁法」(以下、「暫定弁法」という)は行政行為の被害を受けた外商投資企業のクレームの受理、処理に適用されてきたが、ここ数年、外国投資家は投資環境の改善と合法的権益の保護に更に期待している。このような状況の下で、2019年11月に商務部は「暫定弁法」の改正作業を開始し、今年3月に「クレーム弁法」のパブリックコメントを募集し、外資系企業協会、外国商会の意見徴収を経て、来月初め実施するが、これから「クレーム弁法」はどこまで機能し、本当に役割を果たせるかその真価が問われる。

 

二、主な見なし内容

 「クレーム弁法」は「暫定弁法」よりクレーム者の範囲を更に広げ、企業を設立しておらず、投資を展開する外国投資家をクレーム者として取り入れ、外資系企業協会、外国商会に対して、投資環境の問題にクレームを積極的に実施するよう促し、クレーム者はクレーム処理結果に不満の場合は、上級のクレーム処理機関に陳情することができる。またクレームを受理されない決定やクレーム処理結果に異議を申し入れる規定などが盛り込まれた。

 

三、クレーム処理

 外商投資企業のクレームとは、外商投資企業、外国投資家(以下、「クレーム者」という)は、行政機関(法律、法規によって授権された公共事務を管理する機能を持つ組織)とその担当者(以下、「被クレーム者」という)の行政行為がその合法的権益を侵害し、クレーム業務機関に協調解決するよう申請し、または投資環境の問題を反映し、関連政策措置の完備を建議する行為を言う。但し、外商投資企業、外国投資家が他の自然人、法人又は他の組織との間の民商事紛争の協調解決を申請する行為は含まれない。

 

 クレーム業務機構とは、商務部と県級以上の地方人民政府によって指定される外商投資企業のクレームを受理する部門または機構をいう。

 

 クレーム者は、行政行為がその合法的権益を侵害した事実、証拠と理由及び関連法律根拠、または投資環境の問題及び具体的な政策措置の提案を含む書類を窓口に提出し、または手紙、ファックス、電子メール、オンライン申請することができる。

 

 クレーム業務機関はクレーム資料を受け取って、7営業日以内に受理するかどうかを決定すべき。その期限内にクレーム者に受理通知書または却下理由書を送達しなければならない。

 

 クレーム業務機関は、クレームを受理した日から60営業日以内にクレーム事項によって、以下の方式で処理する。

(1)クレーム者と被クレーム者との和解に協力する。

(2)被クレーム者と協調する。

(3)県レベル以上の人民政府及び関係部門に関連政策措置の整備に関する建議を提出する。

(4)クレーム業務機関は認める他の処理方法。

 

主要法令

法  律  名  称

施行日

1

商務部の「外商投資企業クレーム業務弁法」『重要法規解説』をご参照下さい)

2020/10/01

2

国家市場監督管理総局、国家発展と改革委員会、公安部など六つ部門の「企業設立サービスの更なる改善に関する通知」

2020/08/04

3

国務院弁公庁の「対外貿易と外資の安定化業務の更なる完備に関する意見」

2020/08/05

4

最高裁の「民間貸し借り事件審理に適用する法律若干問題に関する規定」

2020/08/19

5

国家知識産権局の「商標登録ファイリング管理弁法」

2020/08/20