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仲裁判断の不服への救済方法について

 中国では、1995年9月1日に仲裁法が施行された後25年以上が経過し、仲裁事件の増加に伴い、仲裁判断の取消を求める事件が増えてきているような状況にある。本稿は、このような状況に鑑み、仲裁判断に不服がある場合の救済方法・手続等についてはどうすればよいか、次の二つの救済方法を検討するものである。

 

一、仲裁判断の取消

 仲裁判断の取消とは、管轄権のある裁判所(一般的には仲裁委員会所在地の中級裁判所)は、一方の当事者の申立て、特定の事由に基づき、法によって仲裁判断の効力を否決する司法監督活動であることをいう。

 仲裁判断の取消を申立てる基本条件は以下の通りである。

 

(一)法律上、仲裁判断の取消を申立てる主体は、当事者、すなわち仲裁申立人、被申立人である。但し、実務上、案外人は仲裁判断によってその利益を侵害された場合には、取消を申立てることができる。

(二)申立人が仲裁判断の取消を仲裁委員会の所在地の中級人民法院に申請しなければならない。

(三)仲裁当事者は、仲裁判断が「仲裁法」の第58条のいずれかの状況に当たる証拠を有する場合には、仲裁委員会の所在地の中級裁判所に仲裁判断の取消を申立てることができる。

(1)仲裁合意がない場合

(2)仲裁判断の事項は仲裁合意の範囲の逸脱又は仲裁委員会が仲裁する権利を有しない場合

(3)仲裁廷の構成又は仲裁の手続が法定手続に違反した場合

(4)仲裁判断の根拠となる証拠は偽造である場合

(5)相手の当事者が公正な仲裁判断に影響する十分な証拠を隠蔽した場合

(6)仲裁員は、当該事件を仲裁する時に賄賂を求め、私利によって不正を行い、法を歪曲し判断した行為がある場合

裁判所は当該判断が社会公共の利益に反すると認定した場合、取消を裁定しなければならない。

(四)「仲裁法」は、申立人が仲裁判断の取消を申立てる場合、裁決書を受け取った日から6ヶ月以内に提出しなければならないと規定している。

 但し、「民事訴訟法」の第八十三条に従って、当事者は、不可抗力の事由またはその他の正当な理由により期限が遅延した場合、その障害が解消された後の十日間以内に、順延期間を申請することができるが、許可するかどうかは、裁判所が決定する。

 

二、仲裁判断の不執行の申立て  

 「仲裁法」第63条の規定によると、被申立人が民事訴訟法第237条第2項に規定されている以下の状況のいずれかに当たる証拠を提出した場合、裁判所が合議廷を組織し、審査、確認し、執行しないことを裁定する。

(1)当事者が契約において仲裁条項を定めていない、または事後に書面による仲裁合意が成立していない場合

(2)~(5)は前出一の(三)の(2)~(5)とほぼ同一

(6)仲裁員は、当該事件を仲裁するときに汚職収賄、私利によって不正を行い、法を歪曲し判断した行為がある場合

 裁判所は、当該仲裁判断を執行することが社会公共の利益に反すると認定した場合、執行しないことを裁定する。

 

三、終わりに

 仲裁は、ADRの最も重要なメカニズムの一つとして、自身の「一審終局」、「手続が柔軟で迅速である」などの特徴を結びつけ、客観的な効果で商事紛争の増発を緩和する役割を果たしている。然し、訴訟とは異なり、仲裁によって生まれた「民間性」と「一裁の終局性」の判断に対して司法権監督の視野に限定的に取り入れ、義務者に対する救済制度を構築する必要がある。

 仲裁判断の取消については、「外国仲裁判断条約の承認及び執行について」(略して「1958年ニューヨーク条約」という)及び「国際商事仲裁モデル法」は、仲裁取消を申立てる理由を手続的事項、公正要求及び公共利益等に限定することを明らかにしている。

 仲裁判断の取消と判断を執行しない制度は、裁判所が仲裁に対して司法監督を行う重要な方法であると同時に、仲裁判断によって定められた義務者に対して司法救済の道とチャンスを与え、仲裁判断の誤りによって損害を齎されないように防止し、ひいては、義務者が自己権利に対する司法救済を実現するためにもなる。

 

 

重要法規解説

 

対外貿易の革新発展の推進に関する実施意見

 

 国務院弁公庁が2020年10月25日、「対外貿易の革新発展の推進に関する実施意見」(以下、「意見」という)を配布した。「意見」は11条で構成されており、その主旨は以下の通りである。

 

一、目的

 国務院が「意見」を配布した目的は、習近平国家主席が提唱した国内外経済の「双循環」を成長戦略の柱に位置付ける方針を反映し、更なる対外開放を堅持しながら、対外貿易と外資状況及び産業チェーンを安定させ、科学技術、業態を革新し、新たな情勢の下で国際協力と競争に関わる優位性を育成し、対外貿易の持続的な発展を実現させるためである。

 

二、主な内容

1、WTOを中心とする多国間貿易体制を維持しながら、より多くのハイレベル自主貿易協定と地域貿易協定を積極的に締結し、貿易円滑化の作業メカニズムの構築を推し進め、新しい技術と新しいルートを取り入れ、国際市場を開拓し、公共サービスの水準を向上させる。

2、東部地区の貿易品質を高め、中西部地区の貿易比率を引き上げ、東北地区の対外開放を拡大し、地域間の対外貿易協力メカニズムを作り上げる。

3、グローバル競争力のある大手企業を育成し、中小企業の貿易競争力を強化し、協業発展レベルを向上させ、積極的に企業をサポートする。

4、産業チェーンとサプライチェーンを保護し、発展させ、産業のモデルチェンジ・アップを推進し、輸出製品の品質を高め、輸入構造を最適化する。

5、一般貿易を強化し、加工貿易を向上させ、その他の貿易を発展させ、国内外貿易の一体化を促進する。

6、各種類の産業集積区をより所に、主幹産業チェーンを強化し、サポート産業チェーンを完備させ、公共サービスプラットフォームを作り上げる。

7、輸入博覧会、広州交易会などの総合展示会をうまく運営し、知名度のある、影響力の大きい国際展示会を育成し、輸入貿易促進モデルエリアを創る。

8、国際市場とサービス保障システムを完備させ、国際市場プラットフォーム創りを推進し、企業の国際市場への参入を助力する。

9、越境ECビジネスなどの新業態の発展を促進し、市場購買貿易方式のテストを推進する。中古車の輸出を積極的に推進し、新型サービス貿易、貿易デジタル化の発展を加速させる。

10、自由貿易試験区、自由貿易港制度の役割を発揮し、貿易の利便性を向上させ、輸出入管理とサービスを最適化し、国際物流保障を強化し、リスク予防能力を向上させる。

 

 

主要法令

 

法  律  名  称

施行日

1

国務院弁公庁の「対外貿易の革新発展の推進に関する実施意見」(以下、『重要法規解説』をご参照下さい)

2020/10/25

2

国家市場監督管理局の「商標印刷管理弁法」

2004/09/01

3

国家市場監督管理局の「健康食品登録と届出管理弁法」

2016/07/01

4

国家市場監督管理局の「中華人民共和国企業法人登記管理条例」

2020/10/23

5

国家市場監督管理局の「外国(地区)企業の中国国内における生産経営活動登記管理弁法」

2020/10/23

6

国家市場監督管理局の「ネット購入商品七日間理由無き返品暫定弁法」

2020/10/23

7

国家市場監督管理局の「知的財産権乱用の禁止と競争行為の排除、制限に関する規定」

2020/10/23

8

国家市場監督管理局の「消費者権益侵害行為処罰弁法」

2020/10/23

9

国家市場監督管理局の「販促行為規範暫定規定」

2020/12/01